第67回 犬のグループ(その4)
文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)
- 2014年4月5日
現在私が住んでいるニューヨーク市では、マルチーズ、チワワ、シーズー、プードルなどの小型犬が人気で、街でたくさん目にします。地下鉄の中で小さなバッグに入って移動する小型犬に出会うこともしばしば。小型犬人気は、全米でも日本でも住宅事情などからくる都会ならではの傾向でしょう。中でも、”ヨーキー“の愛称で知られるヨークシャー・テリアのニューヨークでの人気度は高く、去年の9月にはマンハッタンのヨーキー崇拝派が「世界一大きなヨーキーの集まりを!」とソーシャルメディアなどを通して近辺の飼い主たちに大会実施を呼びかけたという話もあります。今回は、都会で人気の犬種である小型犬、別名トイ・グループについてお話します。
体は小さくても
トイ・グループの犬たちはすべてスモールサイズ。このグループに属する犬種は、中・大型犬の他犬種の原型から徐々に年月をかけて小型化されたと伝えられています。今ではほとんどのトイ・グループの犬たちが人間のコンパニオンや愛玩犬と化していますが、彼らもその昔は、害獣駆除、水中回収犬、ねずみ取り、小動物の狩猟などで人間のために一生懸命働いていました。ニューヨーカーのアイドル的存在のヨーキーもその昔は使役犬で、それもイギリスのヨークシャー地方の労働階級が、ねずみ駆除のために作り出した犬種と聞けば驚く人も多いはず。
このグループの中には、大型犬をもぎゃふんと言わせるくらい勇敢に向かっていく気心を持った犬も多いのは、かつて使役犬として活躍していた頃の気質がしっかり残っているせいでしょう。ただ、愛くるしい外見と小さなサイズから、人間は早くからこのグループの犬たちを使役犬よりも人間の生活上の装飾や愛玩のためとして飼うようになりました。その代表的な例が、ペキニーズ。その昔、彼らは中国の王朝宮廷でのみ所有できる犬種とみなされ、皇族が至れり尽くせりで溺愛していたと言われています。
動くぬいぐるみ
セレブたちがトイ・ブリード(犬種)の愛犬を飾り立て、まるでアクセサリーか何かのように楽しむ姿を見て「私も!」と飼い始めた人も多いはず。そういう私もシェルターで小型犬たちに「こんな可愛い服があるよ!」とまるで着せ替え人形のように飾ることもあり、巷のトイ・ブリードの飼い主がお人形のように扱っている気持ちもわからないではありません。確かにこのグループの犬たちには独特のキュートさがあり、「動くぬいぐるみ」とでも錯覚させるような魅力を持ち備えていると思います。
しかし、忘れていけないのは、そう思っているのは人間だけということ。犬たちは自分たちのことを正真正銘の犬ととらえているので、犬と飼い主との間に大きな見解の相違ができてしまいます。この相違によって問題行動を起こす小型犬がたくさんいます。そういう意味では、「トイ・グループ」という名称にも問題があるのではないでしょうか。これが人間に誤解を招き、犬との間に大きなギャップを与えてしまっている理由の一つではないかと思います。
彼らも他の犬種と同じく、外での散歩に運動、しつけと訓練、心身の刺激、社会性を学ぶ機会などが必要です。これらが満たされてこそ犬は犬として一番の幸せを感じるのであって、いくらトイのように見えても犬であることを忘れずに、外見に惑わされず、犬としてのニーズを満たしてあげられるのが真の飼い主です。
次回は「スポーティング・グループ」について詳しくお話します。お楽しみに!
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