第42回 私立中学入試に英語導入広まる

文/松本輝彦(Text by Teruhiko Matsumoto)

 今年4月入学のための一般入試科目に英語がある首都圏の私立中学は32校。そのうち、今年から実施する学校は13校と全体の4割以上を占める、との報道がありました。この「中学入試での英語重視」の動きは北米から帰国し、私立中学入学をめざす子ども(保護者)にとって朗報です。

小学校での英語

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 小学校での英語活動は、2002年度から実施された文部科学省の指導要領の「総合的な学習の時間」の中で、小学校3年から6年に取り入れられたのが始まりです。「ゆとり教育」と一般的に呼ばれる指導要領での実施でしたが、必ずしも英語学習を求めてはいませんでした。しかし、公立・私立を問わず、小学校での英語活動が広がりました。
 さらに、2011年の指導要領の改訂に伴い、小学校5、6年からの「外国語活動」が正式な学習活動として必修化・実施され、実質的に英語の導入が始まっています。年間35コマ、週1コマが標準ですが、積極的に時間数を増やして、英語の指導に力を入れる学校も増えてきました。学級担任が、英語がネイティブのALT(外国語指導助)と一緒に指導する授業が一般的です。
 このように、徐々に広がってきた小学校の英語教育ですが、これまでは「英語活動」として、外国の言語や文化に馴染み、英語を聞く、話すを中心としてきました。
 ところが、昨年11月、文部省は2020年度から、①現在の5、6年の「英語活動」の開始時期を2年下げて、小学3、4年から早期に英語教育を始める、②5、6年の英語教育を、「活動」ではなく、正式な教科としての「英語」に格上げするという、2つの方針を打ち出しました。この提案の具体的な実施方法についてはこれから審議・決定されますが、5、6年生では「話す・聞く」活動に「読む・書く」を含めた本格的な英語教育が始まることになります。
 この小学校における英語教育の広がりは、「時代の変化に迅速に対応し、国際的に活躍する人材を養成する」という日本社会全体の目標を、文部科学省が実現させようとするものです。そのため、この「小学校での英語教育の広がり」は、今後さらにその勢いを増していくことになります。

中学入試の英語

 私立中学入試での英語導入の典型的な例を紹介しましょう。茨城県つくば市にある私立茗溪学園では、国際化に対応できる人材育成のために文部科学省が積極的に推進している、高等学校での国際バカロレアのディプロマプログラム(IBDP)を2017年度から実施予定です。高校で、そのプログラム参加に関心のある子どものために、中学にグローバルコースを4月から新しく設け、小学6年生(国内生・帰国生を問わず)を対象にAO入試を実施します。募集要項を見ると、「AO入試で求められる英語力の目安は、英検 2 級程度」とあり、IBDPでは高い英語力を要求されますので、AO入試では英語による読解・作文が出題されると容易に想像できます。
 冒頭に紹介した、私立中学入試での英語の導入は、ここで紹介した茗溪学園の例からはっきり分かるように、文部省主導のプログラム、それに対応した小学校での英語の広がりを先取りしたものです。
 英検2級は、滞米2、3年の現地校5年生でも合格できます。私立中学入試の英語導入は、現地校での勉強をしっかりした小学生に大きな希望を与えてくれます。がんばってください。

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松本輝彦 (Teruhiko Matsumoto)

松本輝彦 (Teruhiko Matsumoto)

ライタープロフィール

海外・帰国子女教育カウンセラー。北米の日本人の子どもの教育サポートに30年以上携わる。最近は、北米の保護者向けの教育講演会・情報誌・インターネットを通じての教育情報の発信や教育相談を中心に活動。また、北米の子どもたちが現地校で身につけている「宝(アカデミックスキル)」の教育を日本の学校で広げるために、日本の中学・高校・大学の授業や講演会も活発に行っている。

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