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第43回 米公教育の目的-大学での教育に向けて
文/松本輝彦(Text by Teruhiko Matsumoto)
- 2015年4月5日
「この高校を卒業した生徒は、どんなレベルの大学に進学してもしっかりと勉学できる能力とスキルを身に付けています」。こんな言葉を、アメリカの高校の校長から何度も聞きました。
大学教育が目標
大学、さらに大学院での勉学こそが、子どもが成長し、社会に出た時に必要で、役立つものだとの考えです。逆に言うと、「大学で学ぶ知識や技術があれば、子どもが社会で自立し、成功することができる」と言っているのです。アメリカ的な学歴主義の考え方です。
科学技術が急激に進歩し、それにともなって社会全体が急激に変化し続けている現在。子どもたちが社会で活躍する30年後に必要な知識がさらに高度化・専門化することは間違いありません。そのための教育を受けられるのは大学・大学院です。
その大学・大学院での勉学に耐えられる、知識・能力・学習スキルである「アカデミックの力」を育てることが、アメリカの教育の目標なのです。
アカデミックな力
アメリカの学校教育では、「大学・大学院での高等教育で、レベルの高い知識の習得やさまざまな問題について探求する能力」を身に付けるために必要な学力(これを「アカデミックな力」と呼びます)を、高校卒業までに獲得することが大切です。このアカデミックな力は、大きく3つに分けることができます。
「情報を読み取る力」:自分自身に情報をインプットすることで、はじめは話を聞いて、のちに文章・本を読んで、さまざまな知識を身に付け、理解し、活用する能力とスキルのことです。幅広い分野の知識や考え方を身に付けるのです。
「情報を伝える力」:自分から情報をアウトプットすることで、はじめは口頭(話)で、のちに文章で、自分の知識や考えを他の人に伝える能力とスキルのことです。
「情報を交換する力」:コミュニケーションの能力とスキルのことで、「自分の意見を伝えること」と「他の人の意見を聞く・読む」を通じて、お互いの情報を交換することです。その交換を通じて、お互いに改めて考え直して、両者が新しいアイデアや意見を得ることも含まれます。
これらの力を習得するための、子どもの発達段階に応じて、段階的に身に付けさせるプログラムが、アメリカの教育の中に組み込まれて、デザインされているのです。
「授業中に発言を強く求めるのはなぜ?」「エッセイやレポート、プレゼンがなぜ大切?」と、現地校のでの教育内容について疑問を持つ日本人の保護者からよく聞きます。これらの疑問に答えるためには、「アメリカの学校教育の目標」を知ることが必要です。
以前、このコラムで、「民主主義を守る」子どもを育てるのが、アメリカの税金を使った学校教育の目的だと紹介しました。今回お話した「大学での勉学のためのアカデミックな力」は、もう一つのアメリカの学校教育の目標です。そして、「民主主義」と「アカデミック力」という2つの目標があっても、小学校から高校までに子どもが身に付けなければならない能力・スキルはまったく同じです。
最近の日本では、グローバル社会で日本が生き残っていくために、大学での勉学に「アカデミックな力」が必要だと叫ばれています。しかし、「大学に入るための勉強」をさせている日本の小学校から高校までの勉強では、その能力とスキルは身に付きません。それが、日米の大学教育・大学の格差の原因です。
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