変わりゆく都市の新しいカタチ
2020年、東京は今

夢と希望に満ち溢れた、東京オリンピック・パラリンピック競技大会はもうすぐそこ。各国から注目が集まり、世界中が一つになる歴史的瞬間。五輪をきっかけに変わりゆく日本の社会やメイン舞台となる東京都内の新名所など、東京の「いま」を伝える。

東京オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典であると同時に、各国がそれぞれの文化や価値観を発信し、多様な国際社会における協力関係を確認し合う場でもある。五輪を一つのきっかけと考え、飛躍を目指すには、どのような未来図を描いてアピールするべきなのかを考えたい。【時事通信社】

芸術プログラムの意図を読む
青山学院大教授の飯笹佐代子さん

「文化や民族、ジェンダー、障害などの多様性とどう向き合うか。挑戦的で説得力のあるメッセージを発してほしい」と話す飯笹佐代子さん

オリンピックの競技に先立ち、開会式で披露される芸術プログラム。そこにはさまざまなメッセージがこめられている。多文化共生について研究している青山学院大教授の飯笹佐代子さんは、これまでの各国の演出を振り返りつつ、日本も多文化社会へと進むビジョンを示すべきだと訴えた。

—なぜオリンピックの開会式を研究対象に?
オリンピックの開会式では開催国の芸術プログラムを披露することになっていますが、それが1984年のロサンゼルス五輪以降、だんだん盛大になってきました。ショーとしてテレビの視聴者の関心を集め、スポンサーを確保するための戦略による部分が大きいといわれています。

私はオーストラリアの多文化社会の研究をしていて、シドニー五輪の開会式を見たのですが、その芸術プログラムにストーリー性があって面白いと思い、ほかの国はどのようにメッセージを打ち出しているのかと考えるようになりました。

批判あって建設的な議論に

—シドニーのプログラムの内容は?
白人の少女がビーチでうたた寝をしている間に太古から続くオーストラリアの歴史を夢見るというストーリーがステージ上で演じられました。多くの先住民も参加し、宗教儀礼やダンスも披露されました。最後に少女と先住民の長老が仲良く並んで立ち、協調を示すシーンは印象的でした。

芸術プログラムで白人を象徴する少女の演技=2000年シドニー五輪(AFP時事)

—きれいごと過ぎる感じはありませんか。
実際、批判もありました。迫害の歴史を覆い隠すものだと。白人代表をかわいらしい少女にしたことを問題視する意見も聞かれました。先住民自身もプログラムへの参加をめぐり意見が分かれました。それでも先住民に対する認知度、関心が高まったという肯定的な受け止め方もあります。こうした中から建設的な議論が生まれればいい。

負の歴史も描く潔さ

—ロンドン五輪はどうでしたか?
ロンドンは「一つの都市に世界がある」をスローガンに、多くの言語が日常的に話されている多様性をアピールしていました。ところが同時爆破テロが発生します。ちょうど誘致決定を報じる新聞を手にした人たちが被害を受けました。多文化主義の失敗のような論調まで生まれました。

それでもオリンピックが始まると、芸術プログラムには多様性のメッセージが織り込まれていました。シェークスピア作品のモチーフなどを使い、英国の歴史を描くストーリーで、登場人物の人種の多様性に配慮したり、耳の不自由な子どもたちがアカペラで国歌を歌ったりと工夫がありました。

リオデジャネイロ五輪も素晴らしかった。ブラジルは先住民族、大航海時代のポルトガル人、アフリカから連れて来られた奴隷らが混血を重ね、日本を含む移民も受け入れて多人種の社会を形成してきましたが、芸術プログラムでは奴隷に足かせをした様子まで表現していて、負の歴史をあからさまに描く潔さがすごいと思います。

多様な社会どう目指すのか

—日本のプログラムはどうなるでしょう。
演出を統括する狂言師の野村萬斎氏は「鎮魂と再生」をテーマにするようですが、開催まで詳細は明かされないでしょう。私としては、日本社会が多様性とどう向き合っていくのか、積極的なメッセージを発してほしいと思います。

これから外国人労働者も増え、日本は多文化になっていきます。政府は移民政策は取らないと言い張りますが、働きに来る外国人の数はOECD(経済協力開発機構)諸国の中でも既にトップクラスで、海外から不思議に思われています。みんなで多様性を認め、どんな新しい社会をつくるのかを打ち出していく必要があります。オリンピックの開会式はそのためのちょうどいいチャンスと言えるのです。

いいざさ さよこ
福岡県出身。津田塾大卒。一橋大大学院博士課程修了。東北文化学園大教授などを経て現職。専門は国際文化論、多文化政策論。

写真/JIJI PRESS LTD

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