全ての人に公平な雇用機会を アメリカ採用の基本「EEO」【求職者向け】【採用企業向け】

「Perspective matters. Intent does not.ー 自身の意図ではなく、相手がどう感じるかが重要。」

先日受けたEEOのトレーニングで、強く印象に残っている内容です。

アメリカが訴訟大国であることは、普段から繰り返しお伝えしていますね。
ただこの訴訟、きっとその多くが「そんなつもりではなかった」という発言や行動が発端になっているのかもしれません。

今回は基本に立ち返り、アメリカでの雇用時のベーシック「雇用機会均等法 EEO」について改めて解説していきたいと思います。

1. 雇用機会均等法「EEO」とは?

アメリカの雇用時に基本となるのが、雇用機会均等法 EEO(Equal Employment Opportunity)です。

馴染みのある日本の男女雇用機会均等法から、その内容を想像しうるかとは思います。ただ、米国のEEOは性別だけでなく、以下のような更に広い範囲の内容における差別を禁止しているのが特徴です。

  • 人種
  • 肌の色
  • 宗教
  • 性別
  • 国籍
  • 身体障害
  • 年齢
  • 遺伝情報

これは連邦法を執行する連邦政府機関 EEOC(米雇用均等委員会)によって厳しく定められており、2020年には職場での以下のポスターの掲示が必須となりました。

この法律は下記を含む全てのビジネス活動に適応されます。また、現従業員のみならず、採用活動中の候補者、退職済みの元従業員も対象となる点に注意が必要です。

  • 採用
  • 解雇
  • 昇進
  • ハラスメント
  • トレーニング
  • 賃金
  • 福利厚生

過去の記事『HR先進国アメリカに学ぶ「DEI」』でも紹介した通り、人種の多様性から来る公平性への強い意識を色濃く反映した法律と言えますね。

2. 具体的なEEO違反例

いまいちピンとこない方の為に、EEOCがホームページに記載している具体的な例を見てみましょう。

求人広告

求人サイトやポスター、ウェブサイトなどで求人募集の広告を載せる際「女性歓迎」「若手人材募集中」といった表現は、一定の性別や年齢層の人たちを排除していると捉えられることがある為注意です。

また、日本では一般的な「新卒採用」
この習慣・概念がない米国では、年齢差別だという印象を与えてしまう可能性もあります。

採用手法

紹介に頼り同人種のみの採用になってしまったという形は避けることが勧められています。
例えば、ヒスパニックが多い職場において紹介に依存した採用活動を行い、新しい人材が全てヒスパニックになったという場合は法に抵触している可能性があります。

採用テスト

採用過程で候補者にテストを求める際は、全候補者に平等に受検を求める必要があります
特定の人やグループだけにテストを受けさせるのは、差別とみなされる可能性が高いためです。

写真

選考とは、任される業務が問題なく遂行できるかどうかを判断する為の物。
よって、外見や容姿は意思決定に反映されるべき内容ではありません

3. 日本の履歴書はアメリカで使用できない!?

日本での採用試験で使用される履歴書はアメリカ使用できるのでしょうか?

答えはNO!アメリカで使用すると差別と捉えられてしまう可能性が高くなります。

日本の一般的な履歴書のサンプル

実際に履歴書の例の中でアメリカでは候補者に聞くことができない箇所に番号を振っていますので、番号の詳細をそれぞれ見ていきましょう。

1) 生年月日

生年月日や年齢を聞く、履歴書への記載を求めることは年齢による差別になるためできません。The Age Discrimination in Employment Act (ADEA)では40歳以上の年齢の人に対する差別を禁止しています。また、例え40歳以下の人で年齢によって差別することは禁止されています。

2) 性別

募集する仕事に直接的な関係が無い限り性別を尋ねることはできません。
例えば、「女子だからこの細かい仕事が得意だろう」「男だから海外出張にたくさんいってくれるだろうから高評価」といった、性別によって異なる扱いは言語道断。

また、性別は男・女というくくりだけではなくLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)という多様なアイデンティティが存在します。採用の際に男女という差別を気にするだけでなく、性のアイデンティティで差別をしないことが大切です。

3) 顔写真

前述の通り、履歴書に顔写真を求めることはできません。

4) 通勤時間

通勤時間や居住地も、選考では聞くべき内容はないです。

ここ数年は、都市圏での物価高騰に伴い郊外に居住地を移す人が増えていますね。こういった人々の呼称「Super-Commuter(スーパーコミューター)」という言葉が存在する様に、郊外からの長時間通勤は決して珍しいことではありません。
「居住地が遠いから遅刻してしまうのではないか?」「通勤時間に耐えられず仕事を辞めてしまうのではないか?」と心配する雇用主の皆様の気持ちもよく理解できますが、これは差別と捉えられてしまう為注意が必要です。

5) 家族について

婚姻状況や子供の有無・人数などを聞くことは禁止されています。
雇用主にとっては採用後の保険額を想定する為に聞きたい気持ちもあるかもしれませんね。しかし、これらは業務遂行力の判断に関係ない内容である為、聞くことが禁止されています。
その他にも、以下のような質問は禁止されています。

  • 妊娠しているか
  • 結婚しているか、また結婚の予定があるか
  • 子供の人数や将来的に子供を設けるプラン
  • 子育ての計画
  • 配偶者の就職状況
  • 配偶者の名前

「旦那さんはどんなお仕事をされているんですか?」「お住まいは近くですか?」よかれと思って聞いた質問が、大きな問題を引き起こすこともありえるのがアメリカの採用。冒頭でもお伝えした通り、重要なのは「自身の意図ではなく、相手の受け取り方」なんですね。これから始めて採用を活動する皆様はもちろん、すでの経験がある皆様も、今一度基本に立ち返りEEOの重要性を意識したいものです。

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STS Career

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ライタープロフィール

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ロサンゼルスを拠点とし、アメリカ全土を対象にHR・人材ソリューションを提供するリクルーティングエージェンシー。
企業様には人材発掘・採用戦略策定をサポートするビジネスパートナーに、求職者の皆様には夢の実現を支えるカウンセラーになることを目指します。

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