風力発電を進化させる新技術が発展
- 2013年3月14日
- 環境ビジネス
風力発電の技術改良によって発電効率は高まっている。グリーンビズ誌によると、風力発電とその評価という両技術の向上によって、発電効率の高い施設を風力発電の適地に設置することで効率を最適化できる環境が整い始めている。
▽風力タービン以外の技術改良
進歩が著しいのは、風力データの品質を向上させる技術や環境への影響を削減する技術、さらには風力データの収集コストを下げる技術だ。
キャピタル・シティー・リニューワブルズ(CCR=Capital City Renewables)は最近、アルミ建材を用いた高さ100メートルのラチス構造の気象観測塔をコロラド州に建設した。この種の施設が建設されるのは北米で2ヵ所目だ。
この観測塔は、鉄鋼ではなくアルミ建材を使用し、コンクリートの土台ではなく鉄鋼の土台を使用したという点で独特だ。
塔に作業員が登ることもできれば、傾けて移動させることもできる。それによって、風力発電施設の開発業者が、様々な高さの風の状況を評価できるようになる。
▽通信用と風力用ではニーズが違う
CCRの観測塔は、風力発電業界のニーズを考慮して特別に設計されたものだ。
現在、風力発電業界が主に使用している塔の大半は、もともと通信業界のために設計された塔だ。信頼性の点では高い実績があるが、風力発電と通信業界ではニーズが異なる。そのため、効率面で浪費が生じるのは否めなかった。
「通信塔は設置が非常に厄介なため、風力発電施設の開発業者は通常、ある施設の運用が終了した時点で別の施設に塔を移動することはなく、廃棄している」「これは無駄なやり方だ」とCCRのキリル・ロザノフ最高経営責任者(CEO)は説明する。
▽アルミ建材でコスト削減
風力発電の開発プロジェクトでは、建設前の調査段階で3〜5年にわたって気象観測塔を使う。つまり、半永久的な強度の構造である必要はない。
ロザノフ氏によると、鉄鋼建材を使用して100メートルの塔を建設し、必要な機器も搭載するとその費用は16〜20万ドルになる。
一方、アルミ建材の塔の建設費用は12〜13万ドルだ。また、構造物の大半は再利用できる。ラザノフ氏は再使用回数を最大10回と見積もっている。
▽土地所有者も支持
また、建設工程も、コンクリートに鉄鋼塔を設置するより単純だ。
「鉄鋼板の土台に塔を設置する工事は、許可を取得しやすい」「土地を持っている農家の多くは、コンクリートを埋め込むことに消極的だ」「コンクリートは、塔を除去した後も残される」と、ベースライン・リニューワブルズ(Baseline Renewables)のルイス・ガン事業運営責任者は説明する。
▽登ることのできるラチス構造が主流に
風力発電業界でよく使われる塔には、ラチス構造ではなく管状構造の塔を鉄鋼版の土台に設置するというも一つの種類がある。
この型の塔は、高さ80メートルに到達できるが、作業員が登ることはできず、修理や保守管理の際は機器を取り外して地上に降ろす必要がある。
ロザノフ氏によると、高さ60メートルのもので建設や管理、除去費用は3万ドルから3万5000ドル。
「登ることのできるラチス構造の塔が、おそらくは主流化するだろう」「保守管理に必要な資源や検知器が少なくて済むため、結果的に高い品質のデータを取得するためのコストが低くなる」と、CCRのエイミー・スー・カーシュボーム担当者は話す。
▽評価ツールも重要
柔軟に応用できる風力評価ツールがあれば、プロジェクト開発者にとっての選択肢は拡大する。
風力開発プロジェクトでは、市場環境の変化や事業許可の取得など、いくつかのリスク要因があるが、別の場所に移動して再使用できる観測塔を使うことによって、プロジェクトが実現しなかった場合に開発者が少なくとも投資の一部を回収できるようになる。
▽風速計速の有用性
遠隔検知技術も、風力エネルギーの評価段階で役に立つツールだ。同ツールには、光波を使用するLIDARと音波を使用するSODARがあり、風速200メートルまで観測できる。
ただ、信頼性にやや劣る面があるため、銀行から融資を取り付ける目的ではあまり高く評価されていない。現在、それらの検知器は、気象観測塔と併せて用いられている。
▽タービンの高さと風力データ
「遠隔検知器の価値は、タービンの中心点より高い位置の風速を頻繁に観測できることだ」「タービン全体にわたる状況を知っておくことで、エネルギー生産量をより確実に予測できるようになる」と、DNVケマ(KNV Kema)のケイティー・ブリッグス工学技術者は話す。
タービンの高さでどれだけの風が得られるかは、風力開発プロジェクトにとって永遠の課題だ。信頼できるデータがなければ、融資率が下がり、開発業者の投資意欲も下がる可能性がある。
アルミニウム建材の新しい観測塔の登場によってデータ品質が高まり、開発コストが下がれば、風力発電業界はさらなる進歩を遂げられるかもしれない。
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