発展途上国の携帯電話が生む事業機会

 世界の携帯電話サービスの新規加入者の4人に3人までが発展途上国の人口で占められるなか、携帯電話のおかげで通信サービスを初めて利用できるようになる人が増えている。GSMAリサーチの最新調査で明らかになった。

 グリーンテック・メディアによると、発展途上国の非都市部では、電気や水といった基本的な生活基盤サービスが依然として整備されておらず、銀行も利用できないことが多いが、送電網に依存しない通信塔の設置増を受けて、そういった地域でも携帯電話は普及し始めている。

 そういった変化は、政府や非政府組織(NGO)、および起業家が取り組むべき課題にも変化をもたらす可能性がある。携帯電話通信網を介してマシン・トゥ・マシン(M2M)通信が可能になれば、電気や水、銀行といった基本的サービスを実現するための事業モデルも変わるかもしれない。

 GSMAの調べによると、世界で4億1100万人の人が、携帯電話通信網を利用できるが電気は利用できないという状況にある。たとえば、太陽発電で稼動する通信塔を中心に据えた局地的小規模送電網を構築すれば、それらの人々に電気を供給できる可能性がある。これは、現実かつ巨大な事業機会と言えるだろう。

 また、携帯電話通信網を利用できるが水道を利用できない人は、1億6500万人にも上り、そこにも同様の事業機会が横たわっている。

 さらに、銀行サービスを利用できない成人の数は、世界で25億人いる。預貯金や融資の術がないそれらの人々に、携帯電話に搭載した「モバイル・マネー」を提供できれば、金銭のやり取りに大きな柔軟性をもたらすことも可能となる。

 たとえば、ケニアでは、「Mペサ」というモバイル・マネーのプラットフォームが開発されており、これまでに1500万人以上に銀行サービスへのアクセスをもたらし、総額123億ドルの取引を生み出してきた。

 携帯電話通信網が実現する分散資源型の社会構造は、事業界に大きな価値を生み出す。発展途上国の農村貧困問題にも、これまでにない解決策がもたらされるかもしれない。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る