メタン・ハイドレート開発を邪魔する三つの壁

 天然ガスの一種であるメタン・ハイドレートの採取試験が日本で実施されたことは、米国のエネルギー関連報道でも取り上げられた。しかし、そのこと自体は、目新しいニュースでもなければ、それほど重要でもないとみなす論調が強い。

 ギガOM誌によると、炭化水素資源としてのメタン・ハイドレートの存在は、数百年も前から知られ、それを採取して資源化するという「夢」も、同様に長い歴史がある。その夢を実現するには多大な技術進歩が必要とされ、日本の開発計画はごく小さな一歩にすぎない、と米国の資源専門家らは指摘する。

 その背景には、メタン・ハイドレート採取を困難にする三つの壁がある。

 第一には、環境配慮という課題がある。メタン・ハイドレートは氷状の物質で、そのなかにメタン分子が封印されている。しかし、その氷は冷蔵庫で作られるような塊とは異なり、壊れやすい。

 そのため、メタン・ハイドレートの埋蔵されている海底を下手にかく乱すれば、氷状物質が次々と破壊され、メタン・ガスを大量に発生させる恐れがある。

 そうなると、ガスを失うだけでなく、メタン・ガスを大気中に放出し、二酸化炭素の20倍近くの熱を集め、温暖化を加速させかねない。

 現時点では、氷状物質を破壊せずにメタン・ハイドレートを採取する方法は開発されていない。日本の採取実験でドリルを入れる際に、その配慮が行われているということも報じられていない。

 第二の課題は、経済性の問題だ。メタン・ハイドレートは多くの場合、海底の地中深くに埋蔵されることから、採取時に異物が大量に混入する。それを除去することは比較的容易だが、高くつく。

 メタンをほかの異物から分離する作業はきわめて高価で、現行の天然ガス資源である炭層メタンやシェール・ガスの精製コストとは比較にならない。

 米国の現在の天然ガス価格は1MMBtuにつき3ドル64セントと手頃であることから、メタン・ハイドレート開発の投資意欲につながらない可能性が高い。

 第三に、基幹設備の問題がある。現時点で、広域にわたる海底からメタンを採取して処理する基幹設備は存在しない。おそらくは、海上に浮かぶ何らかの構造物を開発して、メタン・ハイドレートの採取場所に合わせて動かせるようにする必要があるだろう。

 その設備を整えるにも莫大な費用がかかり、それが取引価格に転嫁されるだろうから、ほかの燃料のほうが安上がり、という結果になることも十分ありえる。

 世界の海底には、膨大な量のメタンが眠っている。しかし、それらの課題の解消策を見つけない限り、今後まだ数百年間は海底に眠り続けるかもしれない。

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