小売り業界は、店舗での買い物客が増えた一方で盗難が増加に転じ、すでに圧迫されている利益がさらに削られている。
■利益率に響くほど
ウォールストリート・ジャーナルによると、百貨店大手メイシーズ(Macy’s)のジェフ・ジェネットCEOは最近、商品の盗難問題についてアナリストらに「2022年から確実に増えている。これは業界全体のトレンドだ」と述べた。
また小売り大手ターゲット(Target)は22年11月、業界では「シュリンク」と呼ばれるこの問題によって直近会計年度の粗利益が6億ドル以上低下すると予想しており、同業TJXも最近のアナリストとの電話会合で「シュリンク率の予想外の上昇で、直近四半期は利益が前年同期比0.60ポイント悪化した」と述べた。
バーンスタイン・リサーチの米国小売業担当シニアアナリスト、ディーン・ローゼンブラム氏によると、盗難は売り上げの伸びを上回るペースで増えており「利益率に影響を与えるほど大きな問題になりつつあるため、小売り業者はより頻繁に盗難を口にするようになった」と話している。
小売り業者は通常、年に一度、棚卸し(在庫の現物確認)を行って帳簿上の在庫と比較する。この差が「シュリンク」と呼ばれ、広義では社内外の盗難だけでなく、在庫の紛失につながった可能性がある手順の間違いや不正確な記録も含まれる。
■組織的犯罪が激増
メイシーズのジェネット氏によると、新型コロナウイルスの世界的大流行でインターネット購入が急増した後、買い物客が店に戻ったことが盗難増加の一因で、より多くの盗難はオンライン注文に対応する倉庫ではなく売り場で起きているという。
同氏はまた、国内の特定地域で小売り業を標的にした組織的な犯罪が急増していることも要因の一つに挙げており「この増え方はこれまで見たことのないレベル」だという。
全米小売業協会(NRF)とロス・プリベンション・リサーチ・カウンシル(LPRC)が小売り業者63社を対象に実施した調査では、シュリンク率は20年と19年に上昇した後、21年には低下し、おおむね過去の水準に戻った。22年の数値はまだ出ていない。
シュリンクの計算方法は小売り業者によって異なり、多くは盗難を警察に報告しないため、数字は不正確な可能性がある。NRF/LPRC調査によると、21年はシュリンク率が18年水準まで後退したが、通常の万引に加えて、組織的な小売犯罪を含む外部からの窃盗がより大きな比率を占めるようになっている。
店舗から大量に商品を盗み出し、オンラインで売りさばく組織的な小売犯罪は、NRFの最新統計がある19年には小売り業者の売上高10億ドル当たり約72万ドルの損失となっており、15年から50%も増加している。
NRFのデイビッド・ジョンストン副社長(資産保護および小売り事業担当)によると、7年前は(従業員による)内部窃盗が小売り業者の損失の最大部分だったが、今は外部盗難が最大となっている。小売業者は店舗に警備員やカメラを追加しているほか、陳列棚を施錠したり、顔認識ソフトを活用して常習犯を特定するなどして問題に対処している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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