自動車メーカーは、人件費の高騰を補うため、以前から導入しているロボットにあらためて関心を寄せている。
◇テスラからも影響
ウォールストリート・ジャーナルによると、自動車業界は何十年も前から工場内の自動化を進めてきたが、上昇する人件費に対応し、先進技術を活用するため、最近は一層ロボットに注目するようになっている。また、積極的にロボットを導入する電気自動車(EV)大手テスラのような比較的新しい企業との競争も、伝統的な自動車メーカーの動きを加速させている。
自動車業界は、少なくとも1960年代からロボットを活用して製造をより簡単で効率的にしてきた。国際ロボット連盟(IFR)によると、2022年は自動車関連で13万6000台の産業用ロボットが新たに導入され、電子機器業界に次いで2番目に多かった。その多くは、人の手が届きにくい場所の作業や、身体的負担の大きな作業を受け持って人間と一緒に働くいわゆる「コボット」で、フォードは18年、世界中の24工場で少なくとも100台のコボットを導入していると明らかにした。
工場のロボット化を先導するテスラの幹部は23年、「将来のモデルの製造コストを半減させるという目標の実現には自動化設備の導入が不可欠」と述べ、同業に追従圧力をかけた。
何十もの新しいEV製造工場やEV用電池工場が建設中であることも、ハイテク・システムの幅広い活用への扉を開いている。新工場へのロボット導入は、既存施設を改造するより簡単で、コストも抑えられる。また、古い機械に新しい機械を加えるよりも、互いに滑らかな「会話」ができる最新システムを導入する方が合理的だ。
自動車メーカーは、今いる労働者の多くを置き換えるのではなく、定年退職する労働者と置き換える形でロボットなどの自動化技術を徐々に導入していく可能性が高い。
◇自動化のリスクも
自動車業界の自動化が今後10年間でどの程度拡大するかについてはさまざまな見方があり、車両の選択肢をより少なくして生産を合理化するなど、自動化とは別の戦略の方がより大きなコスト削減が可能と指摘するアナリストも多い。さらに、機械で生産性が向上したとしても、ロボットの修理やプログラミングに必要な人員の確保でコスト抑制が帳消しになる恐れを指摘する学者もいる。視覚的な判断や機敏な調整能力を要する精密な作業をこなすには、人間の方が優れている場合もある。
自動化にはその他のリスクもあり、コンサルティング会社アリックスパートナーズのマーク・ウェイクフィールド氏は「工程に初めてロボットを加える場合、品質に問題が生じる可能性がある」と指摘する。ロボットを導入するには、コスト削減効果や、作業員が効果的に行えていなかった作業ができるなど、明確な利点を得られる必要がある。また、新しいロボットのために既存の工場を改造するには費用がかかりすぎて、現状維持の方がましな場合もある。
ウェイクフィールド氏は「それまで車の生産がうまく行っていたなら、何かを変更した時のリスクとコスト削減という見返りのバランスを考える必要がある」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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