IRS、暗号通貨の売却益に課税 〜 2025年の確定申告から適応、「1099-DA」発行を義務化

内国歳入庁(IRS)は先日、暗号通貨の売却益に関する税務申告規則を変更したことを発表した。テック・バズ誌によると、IRSは、2025年1月1日以降すべてのデジタル資産取り引きの記録として「フォーム1099-DA」を暗号通貨取り引き者全員に発行することを暗号通貨売買仲介業者らに義務づけた。

▽「無法地帯」に「保安官」が登場

2025年1月1日以降に暗号通貨の売買を処理した仲介業者らはその結果、すべての取り引きにおける売買利得を特定して、売却益がいくらだったかを報告する必要がある。納税者は同フォームに記入して添付し、暗号通貨取り引きの売却益を確定申告に含めることが義務化される。基本的に従来の有価証券に関する規則と同一の内容だ。

「多くの人たちが暗号通貨には申告義務がないと誤解している。これまでは1099の発行が仲介業者らに義務づけられていなかったため、所得を隠すのが容易だった」と、金融専門家デジタル資産協議会(Digital Assets Council of Financial Professionals)の設立者リック・エデルマン氏は指摘する。

暗号通貨の税務はそのため、西部開拓時代の「無法地帯」になぞらえられることが多かった。IRSによる今回の規則導入はしたがって、「保安官」が登場したのに等しい。米国の納税者がデジタル資産取り引きの所得を隠すことはそれによってほぼ不可能になり、数百万人という暗号通貨保有者の税務を変えることになる。

▽利得への課税は損失の申告も可能に

規則導入のタイミングも、2025年の暗号通貨の変動に輪をかける劇的な動きと言える。ビットコインの価格は、ことし10月に史上最高値の12万ドル超に達したが、その後に約40%も下落して11月22日には8万4000ドル台となり、年初以来の上昇分がすべて失われた。ビットコイン価格は12月1日米東部時間午後12時半現在、8万5000ドル台で推移している。そのため、多くのビットコイン保有者にとっては、所得申告で損失計上する機会があることを意味する。

「いまこそ熟慮して計画を立てるべき時だ」と、全米暗号通貨協会(National Cryptocurrency Association)のスチュアート・アルダロティ代表は話している。「紙の上での損失を抱える投資家らにとって、来月には売却して損失を計上し、ポートフォリオのほかの場所で計上した利益を相殺する期間となる」。

▽売買手数料の申告があいまいかつ複雑に

ただ、現実ははるかに複雑だ。IRSは暗号通貨を株式や不動産と同様に財産としてあつかう。つまり、毎回の取り引きで利得(キャピタル・ゲイン)か損失(キャピタル・ロス)が生じる可能性がある。

たとえば、米国最大の暗号通貨取り引き所コインベイス(Coinbase)でイーサリアムを1500ドルで購入し、取り引き手数料として50ドルを払ったのであれば、取得費用は1550ドルだったことになる。それを2000ドルで売却すれば、450ドルが課税対象の利得分となる。

しかし、暗号通貨の世界には、この種の売買記録を綿密に管理していない投資家が多い。特に、異なるプラットフォームやデジタル財布間でトークンを動かしている場合、記録があやふやになっている場合が多い。

▽暗号通貨の確定申告サービス業界が活況か

「トークンを別の場所で保有したあとに仲介業者に移した人は、過去の記録を自分で付けていないかぎり、仲介業者はその購入価格がいくらだったかという記録を持っていない。仲介業者が知っているのは、移した時点での価格のみだ」と、米国公認会計士協会(American Institute of CPAs)で税制政策の上級管理者を務めるダニエル・ホッフィ氏は指摘する。

それは法令遵守上の大きな頭痛のタネとなる可能性がある。そのため、暗号通貨の税務サービスを提供するトークンタックス(TokenTax)やゼンレッジャー(ZenLedger)、タックスビット(TaxBit)といった会社らはこれから急激な需要増でにぎわうことになるだろう。

▽不透明な領域

規制環境は一部の重要な領域においていまなお不透明だ。その一例としてステイキング(staking)が挙げられる。ステイキングとは、暗号通貨をロック状態にして、ブロックチェーンが取り引きを承認する過程に寄与することで、その見返りを暗号通貨で受け取ることを指す。つまり、暗号通貨を買うことなく入手し、それらの上昇によって利得を得られることを意味する。

ステイキングをする人たちは最近増えているが、その領域の規制は明らかではない。IRSはことし、ETF(Exchange-Traded Fund、上場投資信託)の発行体がステイキングの報酬を出せることを確認した。そのため、伝統的な投資口座で新たに暗号通貨に投資し始めた数百万人という投資家がいる。

「ステイキング報酬は、ETFで有効化されて以来、ますます一般的になっている」と、デジタル資産管理プラットフォームを提供するグレイスケール(Grayscale)の調査責任者ザック・パンドル氏は話す。

現行のIRSの手引きでは、ステイキング報酬を受領した時点で課税対象所得としてあつかうよう指示しているが、ステイキング報酬として受け取った暗号通貨を売却または使用した時点でのみ課税されるべきだと論じている人も多い。

▽会計士らもまだよくわからず

会計士らが新しい規則に対応できるかに関しても、いくらかの疑問がある。

「ほとんどの会計士は暗号通貨の知識が豊富ではない。この領域の教育研修を受けていない」とエデルマン氏は話す。複雑な報告要件と専門家の知識不足という二つの要因が重なれば、かなりの混乱が生じる可能性がある。

また、IRSの用いる用語が経験豊富な投資家にとっても理解しにくい点も指摘されている。フォーム1040には、当該年度中に暗号通貨を「受領」したかどうかを尋ねる質問が盛り込まれているが、「受領」は「購入」を意味するわけではない。IRSでは、第三者から暗号通貨で支払いを受け取った、採掘やステイキングで暗号通貨を受け取った、あるいは販促目的の無料配布催事で受け取った、いわゆるエアドロップ(airdrop)の事例が該当すると説明しているが、多くの投資家はその質問に誤って答える可能性がある。

市場がもともと限定的だった暗号通貨は、数兆ドルの市場を形成する主流の資産となったことで、世界は変わりつつある。いまではテスラやマイクロストラテジー(MicroStrategy)といった大企業らがビットコインを保有している。

IRSの新規則は、投資家にその準備があるかどうかにかかわらず、暗号通貨が従来型の財務や税務に統合されつつあり、それが加速していることを示している。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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