倉庫型の会員制量販店コストコは、年会費制でさまざまな商品やサービスを安く販売しているが、実際の営業形態はスポーツジムに類似している。
■商品販売は二の次
USAトゥデイによると、コストコは会員の多くが実際には来店しないことを承知でメンバーシップ(会員権)を販売している。来店して買い物をする会員はもちろん歓迎するが、人々には実際に店で買い物をすることではなく、コストコ会員になることに価値があると考えてほしい…というのが同社の本音だ。
ジムの営業も、来ないと分かっている人々も含めて大勢に会員権を売り込む方式で、公共ラジオNPRの2014年12月の報道によると、格安ジム・チェーン「プラネット・フィットネス」ではジム1件は一度に300人程度しか収容できないにもかかわらず、1件当たりの平均会員数は6500人に上る。
ジムに加入する人の大部分は「もっと健康的になりたい」「体型を良くしたい」というやる気満々で加入する。このため、実際にはたまにしか、あるいはまったく行かなくても「いつか定期的に通ってやる」と考えて会費を払い続ける。ジム側は、少数の熱心な常連会員を満足させつつ、あまり熱心でない会員には「ここがあれば大丈夫」と思わせて会員を続けてもらえばよい。
■利益の75%は会費から
コストコもこれと同じ仕組みだ。人々は、会員になれば節約できるという考えに魅せられ、実際にはお得な買い物をしなくても将来そうするつもりで契約を更新する。同社は利益の約75%を会費から得ており、残り25%の大部分は平均以上に買い物をする常連客から生まれる。ジムと同様、会員が来店してもしなくても利益にはなり、商品の販売はビジネスの飾り物にすぎない。
コストコは低価格をうたい文句に客を集め、基本の「ゴールドスター」会員からは60ドル、2%のキャッシュバックなどがある「エクゼクティブ」会員からは120ドルの会費を取っている。どちらの会員も店には入れるが、コストコは低価格の恩恵を受ける可能性が高いのはエグゼクティブ会員だけなのを知っている。
リチャード・ガランティ最高財務責任者(CFO)は、四半期ごとの決算発表でエクゼクティブ会員の増加を報告し、高い会費を払っているこれらの客は全体の約3分の1でありながら売り上げの3分の2を占めていると指摘する。最近の同社第3四半期も、会費を除いた売上高282億ドルのうち約200億ドルは1830万人のエグゼクティブ会員から生まれた。ゴールドスター会員は3780万人もいるが、その売り上げは約80億ドルにとどまる。平均客単価もゴールドスター会員の約211ドルに対し、エグゼクティブは1092ドルに上る。
コストコは商品やサービスを売っているのではなく、それらを使って人々が会員権を購入するよう仕向けている。ゴールドスター会員は、十分に更新する価値があると思えるくらい頻繁に来店しても、恐らく会費の元が取れるほど頻繁には来店していない。プラネット・フィットネスの会員が「いつか行く」という幻想を抱いて月10ドル払い続けるように、コストコの客の多くは安く買えるという約束を信じ切っている。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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