インディアナ州コロンバスは、1980年代から積極的に外国企業を誘致し続け、その甲斐あって今や中西部でも最も経済活動の活発な都市の1つとなっている。
■住みやすく魅力的
ウォールストリート・ジャーナルによると、同市は人口わずか4万6000人の小都市だが、現在は日系企業26社を含む36社の外国企業が進出し、約9000人を雇用している。このうち3社は市内でもトップ5に入る高額納税企業で、ブルッキングス・インスティチューションによると地域の経済生産に占める輸出の割合は全米でも最高の50.6%に上る。
失業率は3.2%と州内では2番目、全米でも36位以内の低さ。製造業雇用の喪失や2008年のリセッションから完全に回復していない中西部では珍しい。雇用市場は堅調で、優秀な学校や大都市並みの各種施設もあり、世界的に有名なモダニズム建築が多いため「草原地帯のアテネ」とも呼ばれている。
教育水準は高く、地元や外国の大学の卒業生が継続的に流入しており、公立校の生徒が自宅で話す言語は合わせて51種類に上る。同市があるバーソロミュー郡では、公立校でフランス語、ドイツ語、日本語、スペイン語、中国語の授業が行われ、州より以前から人権委員会も設置している。インディアナ大学ケリー経営学部ビジネス研究センターのジェリー・コノバー代表は「小さな都市圏としてはここ数年で最も好調な地域の1つ。住みやすく魅力的な地域を作る試みの先駆け」と話す。
■カミンズの存在
コロンバスの成功は、地元のエンジン製造大手カミンズに依存するところが大きく、同社はライバルに先駆けて先進製造技術に投資し、数十年前からより良い街づくりを最優先課題にしてきた。上席幹部を地域の経済開発委員会に送り込み、有名建築家らを雇用することを条件に新しいビルの建設コストを一部負担した。
カミンズと並んで地域の発展に貢献したのは、前向きな考えのさまざまな企業幹部や地域リーダーたちで、コロンバスを「ラストベルト(さびれた鉄鋼業地帯)」の他都市よりも不況に強い街にした。地元リーダーたちは、店やビジネスの拡張のための場所を探す企業のために骨を折り、寛大な税優遇措置や職業訓練補助金を提供し、小さな問題にも助力を惜しまず丁寧に対応している。
■不安は新政権の移民政策
ただし、最近はいくつかの懸念が浮上している。まず、地域の企業は自動車業界関連が多いため、国内の自動車市場の変化に影響を受けやすい。また、市内の大手企業は開かれた移民政策や特殊技能を持つ外国人向けの就労ビザ(査証)「H-1B」に依存しているが、トランプ政権はこれらを見直しの対象にしている。17年4月初め、地元企業LHPエンジニアリング・ソリューションズが市内在住の外国人労働者を対象に彼らのビザの状況や新政権の移民政策について説明する会合を開いたところ、約75人が参加した。
一方、低賃金労働者にとっては市内は住宅費が高く、企業にとって失業率の低さは人材が不足気味であることを意味する。このため、州内や郡内の別の場所で事業を拡張する企業も増えている。08年のリセッション以降、コロンバスにおける企業の事業拡張が最も盛んだったのは13年で、18社が実施したが、16年は7社にとどまった。市は現在も毎年、日本や中国に企業誘致団を送っている。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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