ドイツの自動車部品大手ZFグループは、自動車業界おけるエンジニア不足問題の長期的対策として、米教育団体のFIRST(For Inspiration and Recognition of Science and Technology)に投資している。
■ロボット製作に33万ドル
オートモーティブ・ニュースによると、FIRSTは投資家で起業家のディーン・ケイメン氏が30年近く前にニューハンプシャー州で設立した組織で、高校生にSTEM(科学、テクノロジー、工学、数学)技術に触れる機会を提供している。学生は学校ごとにチームを作り、風船を拾ってかごに入れるといったタスクをこなすロボットを製作して他校と競い合い、勝てば州大会、全国大会、世界大会へと勝ち進める。大会は通常、体育館で開催され、大音量の音楽、ユニフォー ム、応援団などが付き物で、チームは学校の名誉をかけて闘う。
ロボット製作には創造的なエンジニアリング、プログラミング、工作技術、質の高い仕事が求められ、これらは自動車メーカーやサプライヤーが技術者に求める資質と共通している。
現在エンジニア・ポストに多くの空きがあるZFは、全米で21チーム以上のスポンサーとなり、ロボット製作に必要な機械部品の購入などを支援するため33万ドルを寄付しているほか、7月にはミシガン州イプシランティの学生チーム11人による上海への旅行も支援した。訪中の目的は、新しくFIRST支部が設立される中国で現地学生を指導するためで、両国の学生は協力して競争力のあるロボットを作り上げた。
米国チームの指導員で旅行にも同行したZFのソフトウェア・プログラム・マネジャー、クリス・レッサー氏は「言葉の壁はあったが、学生たちは図解や電話の翻訳アプリなどを駆使して壁を乗り越え、1つの大きな国際チームとして協力した。それがこの旅で得た最大の収穫だった」と話す。
ZF、GM、フォードのような国際企業では、エンジニア陣にはドイツ、米国、英国、アジアなどからの優秀な技術者が多く、その会議はまるで国連機関の1つのようだという。
■将来へのつながり
ZFは、FIRSTに参加した学生が同社の指導員や文化に触れることで、エンジニアリングの道に進みたいと考えた時の進路決定に影響を与えられると考えている。広報担当者は「才能が流入するためのパイプラインの構築が必要。当社では製造関連を除いても700件以上の空きポストがあり、STEMの学生、親、指導員に当社のブランドを宣伝しなければならない」と説明する。
2018年春にデトロイトで行われた世界大会に参加した学生たちは、技術者の需要が高いことや、工学系の学位、特に電気工学やプログラミング主体の分野で学位を取得すれば進路に多くの選択肢ができることを認識している。医療用ロボットやゲーム分野に魅力を感じる学生も多いが、ほとんどは自動運転車の開発も視野に入れており、自動運転車はすでに自分が何らかの課題意識を持つ先端技術だと感じている。
10年からFIRSTチームのスポンサーになっているZFは、就職時期を迎えつつある学生の就職先となる可能性が高く、同社広報は「デトロイト大会での当社の存在感は、実際に見るまで理解していなかった多くの幹部をびっくりさせた。今後もFIRSTへの関与を強め、存在感を高めたい」と話している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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