シリコン・バレー4社による人工知能の自前開発 ~ 業界誌ベンチャービート、事例を紹介

人工知能(AI)の事業価値が広く認識されるなか、他社の人工知能技術を購入すべきか、自社で開発すべきかは、多くの企業が自問する大きな質問になっている。ベンチャービート誌では、その材料を提示すべく、シリコン・バレー4社の自前開発の事例を紹介した。

業界会議「トランスフォーム」の主題に

ベンチャービート誌は、業界会議「トランスフォーム(Transform)」を7月10~11日にサンフランシスコで開く予定で、人工知能の活用を主題の一つに取り上げる。

同会議では、シリコン・バレーの新興企業のほか、伝統的な非技術会社の事例が紹介される。前者には、リフト(Lyft)やウーバー(Uber)、エアビーアンドビー(Airbnb)、リンクトイン(LinkedIn)が含まれ、後者にはレイセオン(Raytheon)、シュナイダー・エレクトリック(Schneider Electric)、オーティス(Otis)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)が含まれる。

前者のシリコン・バレー4社は、人工知能技術の社内開発を選び、下記のように有用の機能を可能にしたことで事業運営に役立てている。

■リフト

リフトは、販促やデータ分析、開発、製品管理の担当者で構成される部署横断的な専門班を立ち上げて、AIソリューションを開発している。最大の事業目標は、約1000万人に上る利用者の満足度を高め、利用回数を増やすことだ。

人工知能を使った機能としては、たとえばチャットがある。利用者の質問を予想し、利用実績のデータも分析したうえで、利用者のニーズを満たそうとする同機能は、利用者とのやり取りから学習し続け、利用体験を高めていくように設計されている。

リフトの製品管理責任者ギル・アルディティ氏によると、人工知能は過去1年間で大幅に進歩した。それらの進歩は、野心を持つ企業の技術戦略にとって重要さを増している、と同氏は述べた。

■ウーバー

ウーバーは、社内業務を推進するうえでも製品機能を管理するうえでも、データ主導の意思決定を広範に活用している。たとえば、市場動向に応じた広告出稿や財務目標の設定、さらに需要(利用者)の増減予想にもとづく供給(運転者)の管理に、人工知能基盤のデータ解析を役立てている。

同社はまた、ハードウェアの対応能力も人工知能を活用して準備することで、コスト効果の高いサービスを実現し、リスクを評価して詐欺行為を的確に検出することを目指している。

■エアビーアンドビー

エアビーエンドビーでは、検索結果の番付けをリアルタイムで調整したり、宿泊施設の価格を調整したりする目的で機械学習を活用している。

ウェブサイトやモバイル・アプリケーションでの検索結果を個々の利用者に応じて個人化するAI検索は、過去2年間に同社が大きく成長するのに役立ったという。

同社はまた、自然言語を理解するAI技術を活用して、問い合わせてくる宿泊希望者のメッセージを分類することで、宿泊施設提供者の作業負担を軽減している。

そのほか、機械学習を活用する言語システムは、評価内容の翻訳に使われている。さらに、開発現場では、デザイン・スケッチを製品のソース・コードに変換する段階で人工知能を活用している。

■リンクトイン

リンクトインのAI責任者ディーパック・アガーワル氏によると、同社にとって人工知能は空気のような存在になっているという。利用者向けに表示するフィードの個人化から、システム構築作業の自動化まで、あらゆるものに人工知能が関与している。

同社の場合、人工知能関連人材への需要が高まっているのを受けて、さまざまの部署の社員を対象に、人工知能の知識を研修する制度を導入した。既存の業務手順に人工知能を統合する方法を社員が見つけられるようにするとねらいがある。

【https://venturebeat.com/2019/05/28/lyft-uber-airbnb-and-linkedin-demonstrate-the-power-of-in-house-ai-solutions/】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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