店内技術の活用によって来店客獲得をねらう小売業界 ~ ことしの見本市、キャッシャーレス化技術が目玉に

ニューヨーク市のジャヴィッツ・センターで1月12~14日まで開かれたことしの小売業界向けソリューション見本市「NRF2020:リテイルズ・ビッグ・ショウ(NRF2020:Retail’s Big Show)」では、2020ヴィジョンと銘打たれたカンファレンスが開かれ、店内技術を活用することで実在店舗に消費者をいかに引きつけて買い物してもらえるようにするかについて業界人らが議論した。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じ た。

▽フランス拠点のグローサリー大手、顔認証で自動決済

フランス拠点のグローサリー大手カラフォア(Carrefour)は現在、新たなバック・エンド・システムの導入や、実在店舗の消費者を対象とした技術ソリューションに関するデジタル変革を推進中だ。

同社は、いくつものデジタル技術を試験運用している。なかでももっとも革新的な取り組みは、来店客の顔を認識することで電子決済を実行できるシステムの実験だ。

同社の試みは、アマゾン・ゴーが開拓した無人小売店(キャッシャーレス)システムに対抗するもので、米国市場への進出を視野に入れた動きだ。アマゾン・ゴーの場合、消費者はスマートフォンを入店時に読み取り機にかざす。カラフォアのシステムはそれに対し、来店客の顔を認識して識別する。

▽AWMスマート・シェルフもアマゾン・ゴーに挑戦

一方、カリフォルニア拠点の新興企業AWMスマート・シェルフ(AWM Smart Shelf) は、小売店がキャッシャーレス化できるようにする技術導入を支援する。

同社のシステム「AWMフリクションレス(Frictionless)」は、機械視認カメラ群とデジタル商品ディスプレイを含む各種の技術によって、どの来店客がどの商品を手にとって店を出たかを特定し、顔認証システムとスマートフォンによって自動決済する。

キャッシャーレス化技術の出展や実演は、今回のビッグ・ショウで大きな特徴の一つだった。今後の小売店向け技術競争が激化する代表的分野となることは確実だ。

▽新興企業ボークシー、小売店での催事を考案

かたや、モントリオール拠点の新興企業ボークシー(Booxi)は、小売店が消費者を店内に呼び込めるようにする技術を開発中だ。

同社の共同創設者エリー・ペレス最高収入責任者によると、欲しい物が明確な消費者ならオンライン検索して安いところから買うが、そうではない消費者も非常に多く、実在店舗に立ち寄った際に欲しい物が見つかる場合もある。

同社は、商品やサービスを消費者に体験してもらう催事や会合をデータ分析にもとづいて考案し、それを消費者に周知させて消費者を現場に引きつける技術ソリューションとサービスを実在店に提供している。

同社は現在、20社以上の小売会社を顧客として獲得しており、その実在店舗数は約4000に達する。顧客には、ファッション・スタイル助言サービスを提供する衣料品店や、ペット用浴槽および関連機器の小売店が含まれる。

▽800の出展会社が99ヵ国から参加

毎年恒例のビッグ・ショウは、全米小売連盟(National Retail Federation=NRF) が主催している。小売業界の見本市としては世界最大。ことしは、約4万人の来場者と1万8000の小売会社、800の出展会社が世界99ヵ国から集まった。

2020ヴィジョンでは、NRFを支える実在小売店らにとって最大の課題であるオンライン小売との競争を焦点に、店内技術の革新と拡充の必要性とその可能性について、技術大手や新興企業、小売会社の技術担当者たちが意見交換した。

【wsj.com/articles/retailers-hope-in-store-tech-will-keep-shoppers-in-stores-11579084202】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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