失業率が過去最低水準で推移し、熟練労働者の獲得競争が激化する中、製造業は全米から人材を集めるため引越しの費用やボーナスといった特典の提供を拡大している。
■遠方からも採用
ウォールストリート・ジャーナルによると、国内の各種工場では計50万人の求人が満たされておらず、その数は過去20年間で最も多い。失業率は50年ぶりの低水準(2019年12月は3.5%)で推移している一方、米国人の国内転居率は過去70年間で最低となっている。
メーカーは、離れた場所に住んでいる人に求人への応募を促すため、賃金を引き上げると同時に多額のボーナス(入社一時金)や転居費用を提供しており、求人情報ウェブサイトのZipRecruterでは製造業の1.6%が「入社時には移動費を負担する」と表示している。17年にはその割合は1%だった。
建機メーカーのボブキャット(Bobcat)やトロ(Toro)向けに部品を製造するコロンバス・ハイドロリクス(Columbus Hydraulics、ネブラスカ州コロンバス)は18年から、新入社員が本社工場近くに引っ越せるよう、入社時に一時金を支給している。マイケル・ウィンCEOは「人材獲得ではかなり積極的になる必要があり、遠くから人を引き付けなくてはならない」と話している。ユタ州ソルトレイクシティから引っ越したテクノロジーシステム担当者チャーリー・シャウプ氏の場合、転居費用として2000ドルを受け取ったといい、これを引越しのガソリン代や新居の契約金、通勤のための衣類購入費などに充てた。現在の時給は、ユタで働いていた電動自転車メーカー(13ドル)の倍以上だという。
■時給労働者にも転居費5000ドル
生産の自動化に伴い、メーカーは特に溶接作業員、エンジニア、マシンプログラマーといった専門職の移動費用を積極的に負担している。インディアナ州ラファイエットにあるキャタピラーのエンジン工場は、75マイル以上離れた場所から転居する電気や機械整備の技術者に5000ドルを支給。ロッキード・マーティンも自社ウェブサイトに、テキサスやカリフォルニア工場で採用するエンジニアなど技術職には転居費用を提供すると掲示し、レイセオンのアリゾナ工場は時給17ドルの機械オペレーター職でも最高5000ドルの転居費用を出している。
労働省の雇用統計によると、12月の工場雇用は前月比1万2000人減となり、サプライ管理協会(ISM)によると同雇用は5カ月連続で縮小した。原因として、貿易の世界的減速や国内エネルギー生産の減少、ボーイングによる「737MAX」の減産および停止などが挙げられるが、業績好調な製造業者も、熟練労働者の不足が生産拡大の障害だと話している。
企業は賃金も引き上げており、12月は米製造業の賃金上昇率が前年比3%増と16年以降最大だった。11月のインフレ率は2.1%となっている。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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