電話対応自動化を人工知能で拡充する動きが活発化 ~ コロナウイルスを受けて問い合わせが激増

新型コロナウイルス「コーヴィッド19」のパンデミックによってほとんどの職場や移動、旅行計画が混乱するなか、多くの会社の顧客サービスへの問い合わせ数が世界中で激増している。ベンチャービート誌によると、一部の会社の顧客対応部署ではそのため、激増した問い合わせを処理するために人工知能による機能拡充を図っている。

▽電話急増で顧客サービス業務がパンク状態に

カナダの航空会社ウェストジェット(WestJet)では、旅程を変更したい多くの客が一気に電話してきたため、客の順番待ちが10時間という異常事態に直面した。通常であれば数十秒から数分の待ち時間だ。

そのほか、銀行やクレジット・カード会社らでも同様の事態になっている。キャピタル・ワン(Capital One)では、待ち時間が長すぎて電話回線の接続が切れたという報告もある。また、各社の顧客サービス担当者らも自宅勤務を指示されているため、処理できる件数が減っており、自体の悪化を助長している。

▽従来型のボットでは自動対応に限界

そこで、一部の会社では、顧客からの問い合わせ電話に人工知能で対応するソリューションの性能向上に取り組んでいる。

顧客からの電話に対応する部署では、チャットボット(簡単な質疑応答を自動化するソフトウェア)による自動化がすでに普及しているが、新型コロナウイルスの影響を受けた問い合わせ内容に対応できるほどの質問内容認識能力はない。

その結果、人工知能を基盤とした問い合わせ対応メッセージング機能を既存システムに統合する動きが強まっている。

▽ライブパーソン、質問内容認識能力を人工知能で訓練

人工知能基盤の商業向け会話ソフトウェアの世界的大手ライブパーソン(LivePerson、ニューヨーク市拠点)は、ボット・マネジャーや会話設計者といった新しいボット技術専門職の人材を増やし、人工知能による自動化性能を上げることで、従来のボットでは対応できない問い合わせにも自動応答できるよう機能向上を強化している。

同社は、複雑化した質問内容やもっとも多い質問内容を想定し、消費者からの質問内容をより正確に理解できるよう人工知能を訓練し、適切な回答を出せる高性能ボットを構築している。顧客会社の一部では、そういった高性能版がすでに試験運用されている。

ライブパーソンは、同社の顧客対応プラットフォームの需要が「劇的に強まっている」と話しており、2月中旬以降の利用量が約20%も急増したと報告した。特に航空業界では96%、ホテル業界では130%という驚異的増加を記録している。

同社のプラットフォームは、IBMやヴァージン・アトランティックを含む1万8000以上の世界的ブランドに採用されている。

▽ディレクトリー、業界ごとの問い合わせ傾向を反映させるサービスを強化

一方、特定の分野(業界、業種)について人工知能で訓練された問い合わせ対応ソリューションを開発する新興企業ディレクトリー(Directly)は、マイクロソフト(Microsoft)やエアビーアンドビー(Airbnb)、サムスン(Samsung)を含む顧客会社での利用量が激増したため、サービスを調整している。

ディレクトリーの場合、増加した問い合わせに対し顧客会社らが効率的に対応できるようにするために、人工知能や専門家の意見を最大限に活用し、自動応答の精度や質の向上に取り組んでいる。

問い合わせに使われる単語や熟語、文章には業界によって傾向や特徴、かたよりがある。ディレクトリーでは、業界ごとの傾向や特徴に応じて人工知能を訓練し、対応自動化機能を再調整するサービスを顧客会社らに提供することで、劇的な需要急増に対応しようとしている。

【venturebeat.com/2020/03/19/coronavirus-is-prompting-companies-to-adopt-ai-call-center-solutions/】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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