米国の自動車業界は新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受けているが、米国人に人気の高いピックアップ・トラックが今後の販売回復に向けて大きな力を発揮しそうだ。
■販売は前年と同レベル
ロイター通信によると、GM、フォード、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のデトロイト3は、18日から北米工場の生産再開を予定している。組立ラインの再稼働後はまず、業界で最も収益性が高く、ロックダウン(都市封鎖)期間中も需要が最も高かったフルサイズのピックアップ・トラックとSUVの生産を優先する。
4月の米新車販売は過去50年で最低の水準に落ち込んだが、業界幹部やアナリストによると、コロナの影響が少なかった南部や西部などの州ではデトロイト3の大型ピックアップの売れ行きに大した影響はなく、乗用車を含む全体の平均を大幅に上回った。
JDパワー&アソシエイツのアナリスト、タイソン・ジョミニー氏によると、5月第1週のトラック販売はほぼ前年同期並みで、フォードのマーク・ラニーブ副社長(米国販売・マーケティング・サービス担当)はこれを「驚くべきことだ」と指摘した。
■販売の約2割がピックアップ
ラニーブ氏によると、4月に米国で販売されたライトビークルのうち、約21%をフォードの「Fシリーズ」、GMの「シボレー・シルバラード」や「GMCシエラ」、FCAの「ラム」といった大型ピックアップ・トラックが占めた。通常ピックアップは13~14%にとどまっている。氏によると、今のところ消費者のトラック需要は底堅く、商用客も注文を取り下げていない。
GMのメアリー・バーラCEOとディビア・スリヤデバラ最高財務責任者(CFO)も、6日の投資家会合では国内トラック市場の堅調さを指摘しており「生産を本格再開する際は、トラックとフルサイズSUVの優先順位をかなり高くする予定だ」と述べた。
FCAでは、「ラム」の一部のバージョンが販売店で品不足となっている。マイク・マンリーCEOは投資家らに「一部の地域は他地域よりはるかに販売の効率が悪く、業務再開は全体ではパッチワークのようになるが、ディーラーが受けている注文によって工場は人々の予想よりはるかに高いレベルで生産を再開できる」と説明した。
デトロイト3にとっては、トラック需要の粘り強さと、いかに早く在庫を補充できるかが非常に重要になる。
■値引きとゼロ金利ローン
2020年は、コロナの影響で世界の自動車需要と北米の新車販売は大幅な減少が見込まれる。IHSマークイットは最近、20年の米新車販売が1250万台に落ち込むと予想し、政府の対策も販売の激減を止めることはできないと警告した。
それでもトラックは、デトロイト3が必要とするキャッシュを生み出せる可能性がある。トラック販売はこの1カ月、値引きとメーカーが提供する最長7年間のゼロ金利ローンなどで勢いがあり、「かつてない買い時」(JDパワーのジョミニー氏)となっている。
フォードのラニーブ氏によると、3月と4月の値引きで生じるコストは年初と比べて400~500ドル増し程度にとどまるという。値引き幅はトラックによって異なり、平均的なフォードFシリーズの大型モデル「スーパーデューティー」は約5万6000ドルで売られているが、割引額は平均2000ドルに抑えられている。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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