2021年は年初にワクチンの供給が増えて春までに何百万人ものホワイトカラー労働者がオフィスに戻ると見られていたが、ワクチン接種の展開の遅れ、新型コロナウイルス変異株の急拡大、まだ出勤に不安を抱く労働者が多いことなどを受け、職場再開日を延期する企業が増えている。
■不透明感広がる
ウォールストリート・ジャーナルによると、オフィス再開の遅れは多くの業界で見られる。小売りブランド大手キュレート・リテイル(Qurate Retail、コロラド州)は最近、フィラデルフィアやアトランタなどで5月のオフィス再開予定を9月以降に延期した。テネシー州ナッシュビルのマーケティング会社テクノロジー・アドバイス(TechnologyAdvice)は、当初2月1日だった予定を8月に変更していたが、現在は21年秋から新しい出勤制度を導入し、遠隔勤務か出社するかは従業員が選べる仕組みにした。
また、運輸大手UPSや金融サービス大手フィデリティー・インベストメンツは再開日を決めず、コロナ感染の状況を見ながら安全と判断できた時点で連絡するまで自宅で働くよう社員に指示している。
ほぼ1年に及ぶ在宅勤務は、従業員の負担になっていると考えられる。多くの企業は生産性が向上したと説明するが、経営幹部は社員の創造性の低下を懸念しており、燃え尽き症候群も増えているという。
しかし、いつまで現状が続くのかは不明で、コンサルティング会社マッキンゼーのエリザベス・マイガット氏は「皆が困っている。企業は確実な将来の見通しを求めているが、見通せないことを分かっている」と述べた。調査会社カンファレンス・ボードが米労働者2200人を対象に最近実施した調査によると、44%は会社側のオフィス再開計画を知らず、その割合は20年9月の37%から高まっている。
■1つの目安はレイバーデイ
再開時期の目安として多くの会社が設定しているのは夏の終わりのレイバーデイ(21年は9月6日)で、アルファベット傘下グーグルは最近、オフィス再開の見通しを7月から9月に延期した。会計/コンサルティング大手グラント・ソントンは、8500人の従業員のほとんどが夏の終わりまたは初秋に柔軟なスケジュールでオフィスに戻ることを期待している。
550人を雇用する病院のオンライン予約サービス、ゾクドク(ZocDoc)もレイバーデイ後にニューヨーク市のオフィスを再開する予定で、それまでに従業員の多くがワクチン接種を受けることを期待している。ただし、学校が全面再開するまでは完全なオフィス復帰は難しい。セキュリティー企業キャッスル・システムズ(Kastle Systems)のデータによると、オフィス稼働率は大規模な学区が再開した地域で最も高く、2月上旬時点では主要な学区が何カ月も前から対面授業を行っているテキサス州のダラス、オースティン、ヒューストンでオフィス稼働率が約35%に上った。これに対し、学校の対面授業が限定されているニューヨーク市は15%未満だ。
ウォール街の銀行の中には数カ月前から従業員を職場復帰させているところもある。また、最近ティファニーを買収したフランスの高級品大手LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンなどいくつかの企業は、3月から週に数日以上オフィスに出勤するよう社員に求めている。
一方、マサチューセッツ州のヘルスケア技術会社ブイ・ヘルス(Buoy Health)は、人口の80~85%がワクチンを接種してからオフィスを再開したいと考えている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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