世界の航空業界、利用客の健康確認アプリケーションを導入~ デジタル・ヘルス・パスポートで搭乗手続きを簡便化

新型コロナウイルス・ワクチン接種が世界各国で本格化することを受けて、航空機利用時における搭乗客の健康状態確認ソリューション群の導入も加速している。ビジネス・トラベラーUSA誌によると、いわゆる「デジタル・ヘルス・パスポート(digital health passport)」のたぐいは、ウイルス検査による陰性またはワクチン接種済みをモバイル・アプリケーションによって確認することで、航空機利用手続きを簡便化かつ迅速化、そして安全化する効果的手段として世界各地で採用が始まった。

1.IATAトラヴェル・パス

国際航空運送協会(International Air Transport Association=IATA)が構築した IATAトラべル・パス(Travel Pass)は、多くの国の政府が航空移動者に要求する情報を保存するモバイル・アプリケーションだ。

同アプリケーションは、認定医療機関やウイルス検査機関がワクチン接種情報およびウイルス感染検査結果を搭乗客らと安全に共有し、利用者はそれをもとにデジタル・パスポートを作成して、それを航空会社および空間管理当局に提示する。

シンガポール航空はIATAとの協業のもと、2020年12月末にジャカルタおよびクアラルンプールからシンガポールへの便で同アプリケーションを試験運用した。

2.個々の航空会社独自のアプリケーション

アメリカン航空は、ID保証ソフトウェア会社デオン(Daon)と共同開発したヴェリフライ(VeriFLY)というモバイル・アプリケーションを2020年11月に発表した。

同アプリケーションは、利用客のウイルス検査結果やワクチン接種記録、渡航先に関する書類内容と当該利用者データを照合し、渡航先の国の要件に合致するかどうかを即時確認する。

アメリカン航空は同アプリケーションを12月に試験運用し、また、CDC(Centers for Disease Control and Prevention)の指針のもと、すべての国際線搭乗客にヴェリフライへのアクセスを拡大し、ウイルス検査の陰性または予防接種済みを出国前に確認している。

一方、ユナイテッド航空は、トラべル=レディー・センター(Travel-Ready Center)というソリューションを発表し、そのダウンロードを利用客に呼びかけている。

トラべル=レディー・センターは、ウイルス検査の結果またはワクチン接種の記録をユナイテッド航空のモバイル・アプリケーションおよびウェブサイトに統合して、利用客が陰性または予防接種済みであることを多種多様のモバイル端末によっていつでもすぐに確認できるようにする。

3.AOKパス

国際商工会議所(International Chamber of Commerce=ICC)が国際SOS(保健およびセキュリティーのサービス会社)およびSGSグループ(検査や認証、検証、試験、認定のサービス会社)と共同開発したAOKパス(AOKPass)は、医療記録の安全なデジタル化と携行化を可能にする証明書だ。

個々の利用者が自身の医療記録(ウイルス検査結果やワクチン接種)をアプリケーションに入力するとデジタル・パスを作成できる。同パスは、固有のコードを生成することで、当該個人の医療記録を証明する。

同パスは、アブダビとパキスタン間の複数の航空便で試験運用されたのち、アリタリアがローマ=ニューヨーク間の複数の航空便で試験採用した。

4.コモンパス

コモンパス(CommonPass)は、コモンズ・プロジェクト(Commons Project)が世界経済フォーラム(World Economic Forum)と共同構築したデジタル・ヘルス・パスポートだ。

同パスポートは、既存の医療データ・システム群(たとえば、アップル・ヘルスやコモンヘルス)を介してウイルス検査の結果とワクチン接種記録にアクセスできるようにする。

キャセイ・パシフィック航空が香港=シンガポール間の複数の航空便で2020年10月に同パスポートを試験したほか、ユナイテッド航空がロンドン=ニューヨーク間でも試験した。同パスポートはその後、ジェットブルーとルフトハンザ、スイス航空、ヴァージン・アトランティックによって試験採用された。

5.ヘルス・パス・バイ・クリヤー

空港向け生体認証技術提供大手クリヤー(Clear)は、ヘルス・パス・バイ・クリヤー(Health Pass by Clear)を米国内で市場投入したことで、公衆衛生モバイル・アプリケーション市場に参入した。

利用者は、IDを入力して自身のID情報を自撮り写真とともに確認し、その後、各種の関連医療情報を追加入力する。各空港での体温検査に合格すると、利用者はヘルス・パス・バイ・クリヤーをスマートフォンに表示する。空港の担当者らは、顔認証によって当該利用者の本人認証および医療情報を確認するか、スマートフォンに表示されたQRコードをスキャンして確認する。

同アプリケーションは、レストラン運営会社ファウンダーズ・テーブルによって採用された。クリヤーはそのほか、ニューヨーク市の9/11博物館との協業によって3ヵ月間の試験運用を進めている。

6.IBMデジタル・ヘルス・パス

IBMは、医療向け人工知能ワトソン・ヘルス(Watson Health)を土台にして、スマートフォン向けのデジタル財布「IBMデジタル・ヘルス・パス(IBM Digital Health Pass)」を設計した。

IBMデジタル・ヘルス・パスは、多種多様の会社や団体、学校、組織、施設を対象に多目的のデジタル健康証明システム。

同パスは、顧客や従業員、訪問者の健康情報を会社や団体、施設運営側がそれぞれの要件にもとづいて確認できるようにする。用途拡大策の一環として、コーヴィッド(COVID)19の検査結果とワクチン接種記録の確認機能が含まれ、航空業界での採用が見込まれる。

現在、米国立衛生研究所(National Institutes of Health=NIH)とセールスフォース(Salesforce)がIBMデジタル・ヘルス・パスを試験的に採用することに合意している。

7.エムヴァイン=アイプロワ

サイバーセキュリティー会社エムヴァイン(Mvine)と生体認証技術会社アイプロワ(iProov)は、エムヴァイン=アイプロワ(Mvine-iProov)パスポートを共同開発した。

同パスポートは、人々がウイルス検査結果やワクチン接種の記録を登録できるようにする。利用者は自身のIDを開示しなくても登録可能。医療機関がワクチン接種を提供すると、当該利用者はエムヴァイン=アイプロワとスマートフォンまたはタブレットを使ってその記録のデジタル証明書をオンラインで作成できる。さらに、自撮り写真を撮って電子証明書に追加する。

同パスポートは現在、英国の国立衛生研究所で試験されている。航空業界での試験採用も視野に入っている。

8.予防接種資格認証構想

予防接種資格認証構想(Vaccination Credential Initiative=VCI)は、マイクロソフト(Microsoft)やオラクル(Oracle)、コモン・プロジェクトを含む複数の技術会社や団体らによる連合によって現在、進められている。

VCIは、個々の利用が自身のワクチン接種記録に安全にアクセスできるようにするプラットフォーム。同連合は、会社や団体、施設が従業員や顧客、訪問者らに対してワクチン接種を提供しやすくするための標準的制度およびシステムの設計を目指している。

さまざまのアクセス手段に対応し、各種のシステムやプラットフォームで相互運用可能の安全なデジタル・フォーマットにすることが同連合のねらいでもある。空港および航空業界は同システムの応用対象の一つと位置づけられている。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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