アルファベットの自動運転車(AV)開発部門ウェイモは、実際に起きた死亡事故を人工的に再現したAVの実験を行い、自動運転システムが事故を劇的に減らせる可能性を示した。
■シナリオを再現
オートモーティブ・ニュースによると、同社は完全自動のAVで配車サービスを行なっているアリゾナ州チャンドラー地域で10年以上前からこれまでに実際に起きた交通死亡事故をシミュレーションで再現し、人間のドライバーをウェイモの自動運転システム「ウェイモ・ドライバー」に置き換えて走らせた。その結果、ウェイモ・ドライバーは91件の事故例(シナリオ)のうち84件で事故発生を回避し、4件で事故の規模を軽減できた。変化がなかった3件は、すべてAVがほかの車に追突された事例だった。この種の分析が行われたのは初めて。
■もらい事故も防止
72件の死亡事故のシミュレーションでは、アリゾナ州運輸局のデータを基に、最初は事故を起こした車両で運転手をウェイモ・ドライバーに置き換え、次に事故に巻き込まれた車両でウェイモ・ドライバーを作動させて実験した。信号無視、速度制限違反、中央分離帯を超えるなどして事故を起こした人間のドライバーをウェイモ・ドライバーに置き換えた52件では、交通規則を守るようプログラムされたウェイモ・ドライバーが事故を100%回避した。
注目されたのは、交通規則を守らない外部の道路利用者が起こした事故をAVがいかに回避できるかという点で、ウェイモ・ドライバーが事故の「巻き込まれ役」を務めた39件のシナリオのうち32件で事故を回避し、4件で事故の程度を軽減できた。
ウェイモの安全性研究責任者トレント・ビクター氏は「この結果は非常に重要だ。ウェイモ・ドライバーが自分の車を安全に運転できるだけでなく、他のドライバーの危険行為にも効果的に対応できることを示している」と指摘。事故の程度が軽減された4件では、ドライバーが重傷を負う可能性が1.3~15倍低下したという。
■課題は交差点
このデータセットで最も一般的なシナリオは交差点の事故で、35件以上に上った。ウェイモの研究者ジョン・スカニオン氏によると、交差点の事故で最も多い 3種のシナリオは米国で毎年報告される交差点での死亡事故の93%を占める。こうした事故を防げれば死者を減らす取り組みに重要な結果をもたらす可能性があるが簡単ではなく、ウェイモ・ドライバーが事故の程度を軽減した4件の事故もすべて交差点で起きていた。
ビクター氏は「ある事例は、交差点では状況が極めて速く変化し、事故回避の機会が非常に少ないことを示した」という。カリフォルニア大学バークリー校の先進交通技術研究者スティーブン・シュラドーバー氏は「ウェイモが実験で事故を起こす人と巻き込まれる人に分けたのは、分析して違いを示すのにとても良い方法だと思った。これはチャンドラーにおける彼らのAVサービス展開との直接比較になる。将来はほかの場所でも実験を行なってもらいたい」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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