新型コロナウイルス感染検査で陰性だったことなどを証明する書類の偽造品が横行しており、世界の航空会社が対応に苦労している。
■準備が追いつかず
ウォールストリート・ジャーナルによると、こうした証明書は多くの国で入国時に求められる感染検査の結果を示すものが多いが、国際航空運送協会(IATA)は、フランス、ブラジル、バングラデシュ、アフガニスタンなど複数の国で偽の証明書の追跡を行なっており、英国、スペイン、インドネシア、ジンバブエでは国境警備当局が偽造証明書を販売した人々を逮捕しれている。
今のところ国内線では証明書の提示を求められないため、問題は国際線で発生している。国際旅行客に依存する航空会社、特に欧州で運航する航空会社は、旅行需要の回復が期待される夏に向けてますます警戒感を強めている。
業界は、法令順守を容易にし、同時に需要を喚起できるよう、コロナ後の旅行基準の作成やシステムの再構築に取り組んでいるが、航空会社では必要なすべての新しい健康証明書を確認、監視する準備が整っておらず、偽造証明書の急増によって書類検査の弱点がさらけ出された。今後ワクチン接種の証明書の提示を求める国が出てくれば、問題が悪化する恐れもある。
■業界はデジタルパス推進
航空会社は、ワクチン接種証明と抗体検査の結果を保存できる「デジタルヘルスパス」の導入を進めており、これによって書類の正当性を追跡しやすくなり、空港でそれらを目視確認する必要がなくなると見ている。しかし、カタール航空のアル・ベイカーCEOは「そうしたシステムでも不正な証明書の持ち込みを止めることはできない」と話す。
米疾病対策センター(CDC)によると、現在約120カ国が入国管理にコロナ関連の検査を導入している。米国も国際便の乗客に健康証明書の所持を求めており、客は陰性の感染検査結果またはウイルスから回復した証拠を示さなければならない。
多くの政府は、客に飛行を許可する前に入国ビザ(査証)を確認するのと同じような方法で、航空会社に証明書を確認させている。このためドイツではルフトハンザ航空が、虚偽または不正確な書類を持つ乗客を搭乗させたとして政府から最高2万5000ユーロの罰金を科されている。
ドイツでは、偽造書類の追跡を開始した1月24日から4月8日までに計3838件の「違法移動」があったという。カタール航空は、乗客の健康証明書は受診した医療機関から直接送信させるようにしており、不正文書の携帯が見つかった旅行者はブラックリスト(要注意人物一覧表)に載せられる。
■入管審査は6時間待ち
一方、ロンドンのヒースロー空港では、3月に税関を通過した乗客はわずか54 万1000人と2019年の同月から91.7%減少したにもかかわらず、入国審査に新しい項目が加わったため審査を待つ人の行列は6時間以上続いた。
航空会社は、チェックイン時や空港の他の場所で証明書を確認する責任を負うことに抵抗している。ヴァージン・アトランティック航空のシャイ・バイスCEO は「乗員や空港スタッフに証明書の確認はさせられない。時間がかかりすぎて、空港では待ち行列や処理時間が2~3倍に増えている」と話した。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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