CNNによると、酒類製造大手アンハイザー・ブッシュ・インベヴは、デジタル変革から取り残されるという危機感から大々的な自動化やデジタル化に取り組み始め、大きな成果をあげようとしている。
▽技術に疎い企業体質からの脱却
バドワイザーやステラ、コロナといったビール・ブランドで知られるベルギー拠点のアンハイザー・ブッシュ・インベヴ(Anheuser-Busch InBev=ABインベヴ)は、世界のビールの3本に1本をつくっているというほどビール市場の世界最大手だが、同社のデイヴィッド・アルメイダ最高戦略&技術責任者は、技術活用に疎い企業体質のために時代に取り残される危険がある、と危機感を募らせていた。
世間では、デジタル変革が近年に加速しており、あらゆる産業界において多くの会社がデジタル技術の導入に注力している実態が連日報じられている。しかし「われわれは、現状を打破するような技術や技術応用による事業運営の革新とは無縁の存在だと感じていた」とアルメイダ氏は話している。
▽幹部ら、パロ・アルトと深センの技術業界を視察
同氏はそこで、旧態依然とした事業運営に革新をもたらすべく、デジタル技術への投資に一気に注力し、現在、大々的なデジタル変革を推進中だ。
「われわれが最初に取りかかったのは、デジタル会社らを勉強するためにそれらと一緒に時間を過ごし、何をどのようにすることでどのような課題にぶつかり、どのように成功したのかに関する理解を深めることだった」と同氏は話す。
同氏によると、ABインベヴの幹部らは2019年に、カリフォルニア州パロ・アルトと中国の深センの技術業界集積地域に数週間滞在し、「先進的なデジタル生態系にどっぷりとひたった」。
▽独自の技術革新拠点「ビア・ガレージ」を開設
ABインベヴはそれらの視察を終えたのち、シリコン・バレーの心臓部であるパロ・アルトに自身の技術革新拠点「ビア・ガレージ(Beer Garage)」を開設した。
アルメイダ氏は、ビア・ガレージをシリコン・バレー中心部に設置することで、多くの新興企業や起業家、その予備軍から革新的な案や人材を引き出せるようになる、と期待する。
同社はまた、デジタル技術新興企業らとの協業を刺激すべく、複数の「発想会(ideation sessions)」を主催し、技術革新者たちや地元の技術系学生らが同社の事業を向上させる技術ソリューション群を発表する場を設けた。
▽デジタル・ツインで醸造所を模擬再現
同社はさらに、マイクロソフトの協力を得て「仮想醸造所(virtualbrewery)」システムを構築した。仮想醸造所は、ABインベヴの実在醸造所を模擬的に再現して、効率化できる業務過程を特定できるようにする。簡単にいえば、デジタル・ツインの導入だ。
同社は現在、二つのビール醸造所で仮想醸造所システムを試験運用している。現場のあちこちに多くの検知器を取りつけ、それらから集められる大量のデータをもとに生産過程と施設を仮想再現し、人工知能基盤のソフトウェアによって改善点の特定を図っている。
▽途上国の中小取り引き先のデジタル化支援を重視
ABインベヴは、そういった最先端の技術ソリューションの応用とは別に、より基本的な分析をバーやレストラン、スーパーマーケットといった取り引き先の事業運営に統合することに重点を置いている。
同社にとってそれらの商業主たちはもっとも重要な取り引き相手だ。それと同時に、ほかの業界に比べてデジタル化が遅い分野でもある。
同社の子会社でニューヨークに拠点を置くZテック(Z-tech)は、そういった中小企業のデジタル化を経済的に支援する事業に取り組んでいる。Zテックでは、特に発展途上国での取り引き先のデジタル化に注力している。
ABインベヴには、世界中に約600万という中小顧客がある。南米のそういった取り引き先の40%は銀行口座すら持っていない。Zテックはそこで、非常に単純な財務技術プラットフォームを使ってデジタル銀行口座を開け、信用取り引きサービスを使えるようそれらの取り引き先を支援している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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