新型コロナウイルス感染拡大の影響で輸送コストが急騰しており、すでに人件費や原材料価格の上昇に直面する多くの企業に一層の重圧を加えている。運賃の上昇は2023年まで続くとの見方もある。
■品物の原価の数倍
ウォールストリート・ジャーナルによると、輸送コストは通常、完成品の価格の数分の1だが、布地や工芸品の小売店ジョーアン・ストアズ(Jo-Ann Stores、オハイオ州)のウェイド・ミケロンCEOは「今は貨物の海上輸送費が製品のコストよりも高いことある」と話し、場合によっては原価の10倍に上るという。
バルチック海運指数によると、9月第2週はアジアから米西海岸へのスポットコンテナ輸送価格が前年同期の5倍、前々年同期の14倍以上に達した。
食品・飲料大手モンデリーズ・インターナショナル(MondelezInternational、イリノイ州)は先週、商品価格と輸送コストの上昇で「世界のインフレ率は予想よりも高かった」と指摘し、モルソン・クアーズ・ベバリッジ(Molson Coors Beverage、同)はコスト上昇のほとんどは輸送費の高騰によると説明、3M(ミネソタ州)も物流コストが「大きなプレッシャー」と話している。
■値上げは不可避
フランスのタイヤ大手ミシュランは、天然ゴムを熱帯地方から生産施設に運ぶために数千万ドルの追加費用を支出している。同社ではトラック運転手と輸送用コンテナの不足で製品の輸送価格が高騰したため、数カ月間はさらに高価な空輸に依存していた。最近は空輸を減らしているが、供給管理チームは海運会社や輸送会社との調整に追われており、フロラン・メネゴーCEOは「そのためにタイヤを値上げしなければならなかった」と話している。
消費材大手プロクター&ギャンブル(P&G、オハイオ州)は21年、紙おむつ「パンパース」など一部の商品を値上げしたが、運賃と商品コストの上昇はペースと範囲が大きすぎてすぐには相殺できないと市場に警告。本年度(22年6月締め)に追加で19億ドルの税引き後費用を見込んでいる。ジョン・モラー次期CEOは6月の投資家会議で「宅配までのチェーンの各段階でトラックの需要が高まり続けており、ディーゼル燃料のコストは20年4月から25%以上上昇している」と述べた。
格安小売店ダラーツリー(Dollar Tree、バージニア州)も8月、貨物市場の状況は悪化が続き、コストは当初の予測よりも大幅に高くなると警告した。同社は当初、通常の貨物運送業者が契約の85%を満たし、残りは市場価格で輸送できると見ていたが、8月末時点では、通常の運送業者は契約の60~65%しか実行できず、スポット価格は見積もりよりはるかに高くなると見ている。問題は機器の不足、積み残し、港の閉鎖、労働力不足、コロナ禍関連の問題に起因しており、専門家は海運取扱量が通常化するのは23年と見ている。
ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディー氏は「消費者物価はこの1年間で5.3%上昇し、その上昇の約10%に輸送費が寄与した」と見ており「供給網の全過程で次の業者への出荷コストが上がると、最終消費者に届く段階では著しい変化になる」と指摘した。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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