米カナダ国境にかかる橋アンバサダー・ブリッジの閉鎖は、自動車業界に多額の損害を与えたが、誰がそれを負担するのかという問題が浮上している。
■新たな不可抗力
オートモーティブ・ニュースによると、コンサルティング会社アンダーソン・エコノミック・グループの推計では、自動車メーカーが受けた損害は1億5500万ドル、工場の操業停止による賃金損失が1億4500万ドルで、合わせて業界の直接損失は3億ドルに上るとみられる。ミシガン州デトロイトとオンタリオ州ウィンザーを結び、米カナダ両国の経済にとって重要なこの橋は、カナダ政府のコロナ対策などに反発したトラック運転手らの抗議活動によって6日間閉鎖された後、警察当局がデモ隊を強制排除して13日に再開したが、物流混乱の影響は数カ月続く可能性があり、将来また橋が閉鎖される危険性もある。
法律専門家によると、今回の橋閉鎖は前例のない混乱期における不可抗力の新たな例と考えられ、デトロイトの法律事務所バッツェル・ロングの世界自動車グループ共同委員長ダン・ラストマン氏は「橋を通って部品を運べなかったサプライヤーは、不可抗力(契約の履行を妨げる予期せぬ状況)を理由に責任を免れようとする可能性が高い」と見ている。
自動車業界は、新型コロナウイルス禍やそれに伴う半導体不足などによって過去2年間、生産が妨げられており、自動車メーカーとサプライヤー間の契約紛争がたびたび起きている。アンバサダー・ブリッジの閉鎖では、空輸に頼るサプライヤーもいたが、航空貨物はトラック輸送に比べコストが10倍かかる可能性がある。とりあえずは危機の中で生産ラインを動かし続けることが優先されているものの、最終的には自動車メーカーとサプライヤーが損害への対応方法を話し合う必要がある。
■対応力が向上
ワーナー・ノークロス&ジャッド法律事務所の自動車業界グループ共同委員長マイケル・ブレイディー氏は、最近発生している多くのサプライチェーン問題に向き合うことの利点の1つは、企業が予期せぬ事態へのより良い対処法を考え出すことだと指摘する。「原因が橋の閉鎖であれ港の混雑であれ、部品が時間内に相手に届かないという点は同じ。これがコロナ前だったら供給網の誰もがもっと悪い反応をしただろうが、今は全員がよりうまく対処する方法を知っている」
生じた費用の責任については、サプライヤーとメーカーの関係と契約条件による。ラストマン、ブレイディーの両氏ともクライアントに対し、状況を見守ると同時に自社の契約上の権利をよく理解するよう助言しているが、コストの負担に積極的な顧客もいれば、強硬路線を取る顧客もいる。
一般的なビジネスと同様、サプライチェーンでも取引先との関係は非常に重要になる。会計事務所プラントモランのデイブ・アンドレア氏は「こんな時だからこそ善意を積み重ねて相談相手を増やしたい。供給の基盤部分で支援のネットワークを作っておかないと、次に橋の閉鎖や半導体不足が起きた時に痛い目に遭う」と指摘する。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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