米国の技術系会社らの代表者たちは、遠隔勤務の増加と定着を受けて、専門職人材を対象とした就労ビザ「H1-B」の発給枠を拡大しないかぎり、米国の技術系雇用が国外にさらに流出する、と連邦議会に訴える方針だ。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、技術業界における遠隔勤務の雇用件数は2020年1月から2022年4月に420%増を記録した、と業界団体のテクナ(Tecna)が調査結果を報告したばかりだ。
テクナによると、2022年2月時点で技術系雇用の22%以上は遠隔勤務だった。2020年1月時点ではその割り合いは4.4%だった。
米政府は、H1-Bビザを年間6万5000人に発行し、それに加えて、修士号取得者を対象とする2万人の追加枠を設けている。2005年以降、技術系雇用は大きく増加したが、ビザ発給枠はそのままだ。
一方、カナダは、技術系労働者や起業家の移民ビザに上限を設けていない。そのため、インドや中国、東欧といった技術人材大国のソフトウェア・プログラマーやソフトウェア工学者らがカナダに大量に移住している。カナダが近年に先進技術研究&開発の世界的拠点に成長した背景には、技術頭脳を世界中からひきつけるようになったという要素が大きく作用している。
マイクロソフトやグーグル、メタを含むいくつかの米技術大手らは、優秀な外国人人材を米国内で雇えないため、多数のそういった人材をカナダ支社で積極的に採用している。
電算技術業界協会(Computing Technology Industry Association)と米労働省労働統計局の統計によると、技術系職種の米国内失業率は3月時点で1.3%で、米雇用全体の失業率の約3分の1だった。現在の技術業界の失業率は、2019年6月以来の最低水準だ。
H1-Bビザの人数枠の拡大をめぐる議論は、ここ数年間、議会ではほとんど取り上げられてこなかった。
新型コロナウイルス・パンデミックの発生以来、米国の技術系会社らは、外国の人材を遠隔勤務従業員として雇用することを積極化してきた。米国の技術系会社を顧客として外国の人材を紹介するカナダ拠点モブスクワッド(MobSquad)では、過去2年間に事業が4倍に成長した、と報告している。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
2024年4月29日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
米商務省、TSMCのアリゾナ工場への投資を提案 〜 米中緊張悪化を背景にチップの国産化に重点
-
ディープフェイク、金融サービス業界をいよいよ標的に 〜 生成人工知能による音声模倣で詐欺急増は必至
-
2024年4月25日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
広告嫌いのテスラが一転、積極展開
-
ビットコイン半減は価格にいかに影響するのか 〜 最高値更新から乱高下、次の半減期が目前に
-
2024年4月22日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
ボルティモアの橋崩落、輸出・小売業者に影響
-
米国のMBA課程、人工知能分野の教育を積極化 〜 会社で求められる技能に学生側も関心を強める
-
2024年4月18日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
テスラ、急速充電網を開放~EV普及の節目となるか
-
2024年4月15日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
EV生産コスト、27年にはガソリン車より安く~ガートナーが予想
-
人間の労働力の方が人工知能より安価 〜 MITの研究、雇用機会の大部分は人工知能にまだ奪われないと結論
-
ドローン配送に現実味~運用範囲広がる