「カイゼン(改善)」の名称で知られ、無駄をなくして効率を高める生産方式が世界で広く採用されているトヨタは、近く効率化の究極の理想と期待される自動生産管理技術の導入を始める。
■AIが人の動きを観察
オートモーティブ・ニュースによると、同社はテキサス州の新興企業インビジブルAI(Invisible AI)と提携し、北米の工場に、日々の組み立て工程で作業員の関節や目の動きをひそかに追跡する箱型の装置を数千台設置する。
インビジブルAIが開発したこの装置はタブレットサイズで、カメラ、プロセサー、データストレージが1つの箱に収められ、監督者が監視したり、労働者が体にセンサーを装着したりすることなく、人工知能(AI)を使って作業中の人の動きを分析し、効率と安全性の向上を図る。また、作業が正しく終了するとリアルタイムで作業者に通知される。
トヨタはこのシステムを最初にインディアナ州プリンストンの組立工場に導入し、その後北米の14工場に広げる予定。
同社は、無駄な動作や業務に支障をきたす恐れがある工程を生産から排除するため、作業チームのメンバーやマネジャーがあらゆる小さな改善個所を探求しているが、それは伝統的に観察によって行われてきた。インビジブルAIの装置は、作業を観察する頻度と精度を高め、作業全体の非効率性を見つけるまでにかかる時間を短縮し、改善に専念する時間を増やすのに役立つと見られている。
■現場でデータ解析
プリンストン工場では当初、作業区域の半分に約500個のインビジブルAIボックスを設置し、その後残りの半分にも設置する。1つの装置が1つの作業場を追跡し、体動データを処理しながら、けがにつながる身体的負荷を特定。繰り返しによって体への負担になり得る動作を見つける。また、製品の欠陥もその場で検出でき、作業員自身が見なければ分からないような欠陥を未然に防ぐことが可能だ。例えば「接続が不完全だ」と作業員に警告することができる。
さらに、各作業のモーションキャプチャー(動きのデジタルデータ)がその場でカメラシステムに保存されるため、欠陥調査や安全監査の際に「根本原因分析」の時間を大幅に短縮できる。
インビジブルAIの装置は自己完結型で、独自に情報を取得、保存、分析でき、中央装置へのデータ送信のために貴重な帯域幅を使わない点も評価されており、トヨタはこの装置を安全性やエルゴノミクス(体にやさしい環境)の改善に活用する可能性も検討しているという。北米トヨタの車両生産技術および製造プロジェクト革新センターを担当するグループ副社長のスティーブン・ブレナン氏は「ビッグデータは、作業の最適化や柔軟性を高めるために重要だが、データセットが非常に大きく複雑なため、従来の方法で処理することは難しい。インビジブルAIは、生産チームのリーダーやグループリーダーが比較的簡単に使用でき、データ解析は現場で行われるため、通信網インフラの必要性を最小限に抑えられる」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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