米国では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降、高齢者も頻繁にスマートフォンやタブレットなどハイテク機器を利用するようになり、デバイス依存も増えている。
■子は孫への影響を懸念
ウォールストリート・ジャーナルによると、高齢者団体AARPが最近発表した調査報告から、65歳以上の米国人は、ニュースを読んだりゲームをしたりするためにスマホやタブレットを頻繁に使うようになり、ソーシャル・メディアの利用も増えていることが分かった。銀行口座の利用や買い物をオンラインで行うことも増えている。
市場調査ニールセンの最新報告書でも、50歳以上の米国人が動画投稿サイトのユーチューブ、動画配信ネットフリックス、フールーなどのサービスの成長に貢献していることが明らかになった。
高齢者の多くは、パンデミックをきっかけに、親類、友人と連絡する方法としてフェイス・タイムやズームを学び、動画のストリーミング鑑賞を娯楽に加えた。AARPリサーチ部門のインディラ・ベンカット上席副社長は「新型コロナは高齢者のハイテク導入を加速させたが、それが同時に通信端末への依存の要因にもなった」と指摘する。
彼らの成人した子供たちの一部は、親が孫と会う時に端末のスクリーンが家族で過ごす時間の邪魔になることを心配している。子らが特に気にしているのは食事中の電話で、15歳、19歳、21歳の子供を持つミルウォーキー在住の臨時教員女性は「家族そろって食事をする時、子供たちは食卓に携帯電話を持ち込まないことになっているが、私の父が携帯電話を取り出してしまう」と話した。
かつてアウトドア用品メーカーのCEOを務めたこの父親(83)は、iPhone(アイフォーン)をポケットに入れて持ち歩き、夕食の時もソファに座っている時も頻繁に取り出す。これで人と話したり、ポッドキャストの聴取、ニュースの閲覧、興味を引かれた事柄の調査、天気の確認などを行っており、食事中の使用には自身も罪悪感を感じているが、通知音が鳴るたびに見てしまうという。父親は「これにとても愛着があるんだよ」と明かした。
■10代より長い閲覧時間
2019年のニールセン報告によると、65歳以上の米国人のスクリーン使用時間は1日10時間近くに達し、その大部分はテレビに費やされていた。21年に小児科医学誌JAMAペディアトリックスに掲載された研究論文によると、10代の若者のスクリーン使用時間は1日平均8時間近くで、そのほとんどはビデオ、映画、テレビ番組の視聴やストリーミングだった。
子どもの場合、ある種のスクリーン利用が発達中の脳に悪影響を及ぼす可能性があるほか、ソーシャルメディアは10代の少女の摂食障害と関係があると言われているが、こうした問題は年長者には当てはまらず、ある種のデジタルゲームは認知力を高め、スマホの使用は孤独感を紛らわすに役立つという研究報告もある。
ハイテクに精通した高齢者の中には、暇つぶしではなく自身の興味を追求するために端末を活用する人もいる。イリノイ州の元美術教師男性(69)の場合、パソコンで作曲し、携帯電話でスマート家電を管理し、フェイスブックやインスタグラムで友人をフォローしており、パンデミック期間中は、ケーブルTVを解約し、ストリーミングプレイヤーのロク(Roku)を購入し、ディズニー+(プラス)、ネットフリックス、アマゾン・プライム・ビデオでストリーミングを開始した。
今年は夫婦で欧州旅行を計画しているというこの男性は、語学アプリ「Duolingo(デュオリンゴ)」でドイツ語を学んでいる。また、アーティスト向けSNS「Behance(ビハンス)」で自身のデジタルアートを投稿したり、他人の作品を鑑賞したりして多くの時間を過ごしている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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