米国野村ホールディングスの主任エコノミストによると、世界の主要国の多くは、今後1年以内に景気後退に陥る可能性が高い。CNBCが報じた。
▽各国中央銀行は「利上げを前倒しで行う姿勢」
「現在、中央銀行の多くは、基本的に一つの任務、つまりインフレーションを抑えることだけに重点を置いている」「金融政策の信頼性はそれにかかっており、失敗するわけにはいかない」「そのため、主要各国の中央銀行はインフレーション抑止をねらった金融政策をさらに積極化させるだろう」とロブ・スバラマン氏は7月5日、CNBCの経済報道番組「ストリート・サインズ・アジア」で話した。
同氏は、米国野村でアジアを除く世界の市場調査責任者も務めている。
同氏はさらに、主要各国の中央銀行について、「利上げを前倒しで行う姿勢ということだ」「われわれはこの数ヵ月間、景気後退のリスクを指摘してきた」「先進経済国の一部では景気後退にすでに入りつつある」と指摘した。
米国野村證券では、米国に加え、ユーロ圏、英国、日本、韓国、オーストラリア、カナダでも2023年に景気後退に入ると予想する。
▽浅くて長い景気後退に突入という可能性
世界中の中央銀行らは、インフレーションが一過性であることを期待して、「超緩い金融政策」をあまりにも長いあいだ続けてきた、とスバラマン氏は指摘する。
同氏はまた、「多くの国の経済が弱体化している場合、輸出に頼った成長は望めない。そのことは、景気後退リスクが現実的であり、その可能性が高いと考えられるもう一つの理由だ」と話した。
米国では、2022年最終四半期から5四半期にわたって浅くて長い景気後退が起こる、と野村證券は予想する。
景気後退の一般的定義は、四半期ベースのGDP成長率が2期連続でマイナスになる状態、またはGDPが2四半期連続でマイナス成長になった状態。
▽米政策金利、3.75%まで上昇か
米国連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行は、利上げによって記録的インフレーションを抑え込もうとしている。FRBは6月に基準金利を75bp(basis points)引き上げ、1.5~1.75%の範囲とした。パウエル議長は7月に50または75bpの再利上げがある可能性を示唆している。
米国野村は、「(FRBが)7月に75bp、その次の会合で50bp、その後さらに2023年2月までにFF(Fed funds)金利を3.75%にするまで25bpずつ引き上げる」と予想する。
▽「中国だけが例外」
米国野村はまた、オーストラリアとカナダ、韓国を含む一部の中規模経済圏において利上げが不動産市場の崩壊とディレヴァレジング(レヴァレッジ解消)を誘発すれば、予想以上の不況に直面するという可能性を示した。
「中国だけが例外で、緩和的な金融政策によって経済が活性化し、不況から回復しつつある。しかし、北京がゼロ・コーヴィッド戦略を堅持するかぎり、再都市封鎖して不況に陥る危険性がある」と指摘する。
「中央銀行が金融引き締めでインフレ率を下げなければ、高インフレ体制に移行して行き詰まったときの経済への打撃の方がはるかに大きい」とスバラマン氏は警告している。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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