スマート家電を購入してもインターネットに接続していない人が多く、その機能が十分に活用されていない。この現状を変えるため、家電メーカーはさまざまな方法で消費者にネットにつながせようとしている。
■接続派は半分以下?
ウォールストリート・ジャーナルによると、需要の減速や材料費高騰に直面する家電業界は、家庭のWi-Fiネットワークに組み込める食洗機やオーブンなどのインターネット接続型家電が、従来は購入時に1回限りだった顧客との関係を持続するのに役立つと期待している。
メーカー各社は、ネットとつながる家電製品を通して、消費者がどのように製品を使っているかのデータや深い理解を得られ、交換部品や関連する定額制サービスなどを販売できる。また、ソフトウェアの無線更新によって製品の機能を改善することもできる。
業界大手LG電子とワールプールは、こうしたスマート機器の開発を最優先事項にしているが、実際にはスマート家電をWi-Fiと接続していない家庭も多い。LGによると、同社が販売したスマート家電のうち、ネットと常につながっている製品は半分より少ない。ワールプールでは半分以上が接続されているという。
LGのスマート家電「ThinQ」部門の米責任者ヘンリー・キム氏は「消費者は、メーカーが考えるデータの長期的価値を理解していないため、時間を割いてネットと家電をつなぐことにあまり関心がない」と話す。
市場調査ガートナーのアナリスト、ビル・レイ氏によると、家電を買った当初はネットにつながれていたとしても、接続サービス業者やルーター、もしくはパスワードの変更など、接続が途切れる理由はいくつもあるという。
■つながり続ける方法を模索
スマートホーム(人工知能やモノのインターネットなどを活用し、快適に暮らせる住宅)のトレンドは2014年ごろから広がり始め、現在LGが販売している家電の8~9割にはスマート機能が搭載されている。消費者需要の低迷や材料費・エネルギー費などのコスト増に直面する製造業にとって、新しい収益源の開発は重要な課題になっているが、スマート家電は消費者からデータを取得し、新たな収益機会を生み出す。
LGの場合、家庭にある冷蔵庫のフィルター(ろ過器)を通過する水量のデータを基に、フィルターの交換時期を携帯電話アプリで通知している。冷蔵庫がネットとつながっている家庭は、そうでない顧客よりろ過器の購入額が多い。
同社は、家電売り場でネット接続の利点の説明に力を入れているほか、配送業者と協力して、製品を家庭に設置する時は確実にネットにつなぐようにしている。ソフトウェアについても、機器の通信接続がいったん切れても自動的に再接続できるように取り組んでいる。
ワールプールも、Wi-Fi接続が1分間途絶えた場合、自動的に再接続する「セルフヒーリング」機能を備えた家電製品の開発方法を模索している。家庭での使用環境にも、ルーターからの電波が弱いあるいは届かない場所に家電が置かれているなどさまざまな問題があり、同社はより強力なアンテナを備えるためハードウェア開発にも取り組んでいる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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