フォーブス誌では、1月14~17日にニューヨーク市で開催された全米小売連盟(National Retail Federation=NRF)主催の見本市で観察された小売業界向け先進技術の最新動向として、「三つの柱」が大きな特徴だったと報じた。それによると、その三つの柱には、1)在庫管理合理化、2)店舗運営の生産性、3)キャッシャーレス会計がある。
▽在庫管理合理化
ここ数年の供給網問題は、小売業界にとって特に深刻な影響をおよぼしてきた。それに対応するために、在庫を正確に管理しておくことがいままで以上に重要になっている。
NRFの見本市では、マイクロソフトが「マイクロソフト・クラウド・フォー・リテイル(Microsoft Cloud for Retail)」の新製品を二つ投入した。一つは「ストア・オペレーションズ・アシスト(Store Operations Assist)」で、もう一つは「アイファイ・スマート・ストアース・アナリティクス(AiFi Smart Stores Analytics)」だ。
クラウド・ソフトウェアの前者は、店舗運営に関連したデータを統一管理することで、在庫や価格、販促、顧客関係といった各種の管理業務を向上させる。それをマイクロソフト・チームス(Microsoft Teams)で設定しておけば、店員間連携も円滑化できる。
後者は、新興企業のアイファイ(AiFi)と共同開発した技術で、来店客らの店舗内行動を分析して洞察の抽出につなげることができる。
かたやエヌビディアは、万引きやそのほかの諸問題に起因して在庫が減っていく問題に対応するためのソリューション「リテイルAIワークフロース(Retail AIWorkflows)」を出展した。
大規模小売店での自己会計が増えているのにともなって、買い物客が値札をすり替えるといった手口が増えている。そのため、スキャンした商品の寸法や形状が商品情報に合致するかどうかをリテイルAIワークフロースによって照合して異常を検出できるしくみだ。
▽店舗運営の生産性
小売店の生産性に影響する大きな要因の一つが、店員の離職率の高さだ。マッキンゼーの調査によると、小売店の店員の約半数、店舗管理責任者の63%が、仕事に就いてから3~6ヵ月以内に退職を考えたことがあった。
NRFの見本市では、店員らのシフト管理のための技術から店内清掃ロボットまで、高離職率の問題に対応しようとするさまざまの技術が紹介された。
そのなかのおもな一つは、グーグル・クラウドとブレイン(Brain)の提携で開発された商品棚在庫情報分析技術だ。同ソリューションは、ブレインOSインヴェントリー・インサイツ(BrainOS Inventory Insights)を基盤とする次世代型店内在庫分析システムだ。
ブレインは、世界最大級の店舗内在庫確認ロボットと管理システムを提供している。ブレインOSを搭載したロボットが収集した商品陳列棚在庫データとグーグル・クラウド・プラットフォームを統合したことで、小売店らは使いやすいダッシュボードに簡単にアクセスしてリアルタイムの在庫情報を即時確認でき、それによって在庫管理を最適化し、販売機会逸失を回避できる。
▽キャッシャーレス会計
アマゾンは、機械視認技術と人工知能技術を統合した「ジャスト・ウォーク・アウト(Just Walk Out)」技術を出展し、キャッシャーレス会計の最新版を披露した。ジャスト・ウォーク・アウトは何年も前から使われているが、アマゾンは、同技術を数年前に直営店に初導入したのち、技術更新を重ね、売店チェーンを展開する他社にも提供し始めた。
また、会計処理を合理化するモバイル・アプリケーションも増えている。アパレル小売のルルレモン(Lululemon)やギャップ(Gap)をはじめとする小売チェーン大手らは、店舗内キャッシャー以外の場所で店員と来店客がやりとりしながらモバイル・アプリケーションで代金支払いや返品(返金)を処理できるようにするソリューションを導入している。
そのほか、新興企業のズィニア・リテイル(Xenia Retail)は、クアルコムと提携して非接触決済技術を開発した。店舗に依存しないアプリケーション「スキャンペイゴー(ScanPayGo)」によって、買い物客らは商品をスキャンするだけで代金を支払うことができる。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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