一部の新型電気自動車(EV)にAMラジオが搭載されていないことについて、天災・人災に対応する連邦緊急事態管理局(FEMA)の元局長らは、メディアを通じて流される重要な一般向けの警告がドライバーに伝わらない恐れがあるとの懸念を示した。
■最後の通信手段
ウォールストリート・ジャーナルによると、フォードやテスラなどの自動車メーカーは、新型のEVモデルからAMラジオを削除している。メーカー各社はその理由を、EVに搭載される各種のモーターはAMラジオと同じ波長の電磁波を発生し、干渉によってブザー音や信号が弱くなってしまうからだと説明している。
しかし、7人の元FEMA局長によると、AMラジオは自然災害や異常気象の際、FEMAが一般市民に緊急情報を提供する連邦の全米公共警報システム(NPWS)の重要インフラとして機能している。7人は5日、ピート・ブティジェッジ運輸長官と一部の議会委員会に送った書簡で「政府は自動車メーカーがAMラジオ搭載を確実に維持するようにすべき」と伝えた。
書簡提出者の1人で、オバマ政権時代にFEMA局長を務めたクレイグ・フーゲート氏は「ほかの全ての通信手段が機能しない時、ラジオはコミュニティーが持つ最後の手段になることが多い」と指摘する。
FEMAによると、75を超えるラジオ局(そのほとんどはAM放送で運用され、米人口の90%以上が聴取可能)は、緊急時およびその後も国民に情報を伝え続けるための補助通信機器と発電機を備えている。書簡は「これを車から外す状況が続けば、今後の地域、州、連邦政府の災害対応や救援活動にとって重大な脅威になるだろう」と警告している。
■AAIは対応を検討中
メディア追跡会社ニールセンによると、米国では推定4700万人がAMラジオを聴いている。
最近のドライバーは、スマートフォンその他の技術を通じてお気に入りのラジオ局を聴取できるが、元局長らによると、それらのサービスを可能にしている信号は、緊急事態の際にはAMラジオほど信頼できない。
FEMAのアントワン・ジョンソン緊急警報システム責任者は「AMラジオは、最も壊滅的な自然災害の際に何度も試練に遭い、全てに耐えてきた」「EVからAMラジオを取り除くことは、人々が車に乗っている時に重要な公共安全情報を受け取る能力に影響を与える可能性がある」と警告している。
エド・マーキー上院議員(民主、マサチューセッツ州)は2022年12月、EVメーカー20社に書簡を送り、将来のEV計画とそれらにAMラジオを搭載するかを尋ねた。これに対し、米国の主要自動車メーカーが加盟する米国自動車イノベーション協会(AAI)は、安全警告へのアクセスを維持することを約束している。
AAIの広報担当者によると、同協会は全米放送事業者協会(NAB)とこの問題について協議しており、消費者が車内で緊急放送の警報を引き続き受け取れる方法について理解を深めるため、FEMAに働きかける予備段階に入っているという。NABのカーティス・レギート会長兼CEOは「これまでの話し合いは生産的に進んでいる」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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