EV充電器メーカー、テスラ規格の採用を検討
- 2023年6月29日
フォードとゼネラル・モーターズ(GM)が相次いで電気自動車(EV)大手テスラの充電網を活用する方針を発表した。これを受けてEVの充電器メーカーは、テスラ独自の北米充電規格(NACS)をEV充電の標準として受け入れる検討を始めている。
■CCSだけでは客失う
ロイター通信によると、3社合わせて米国のEV市場の60%以上を占めることから、NACSはEV充電規格の主役として急浮上している。バイデン政権が支持してきた競合するコンバインド充電システム(CCS)規格の充電器だけを提供するネットワークは、このままでは客を失う恐れが出てきた。
自動車大手の動きに対応して連邦政府も先週、CCS規格の充電器が併設されていればテスラ規格の差し込み口を提供する充電ステーションも数十億ドルの連邦補助金の対象になると発表した。EVの普及に必要な数十万台の充電器を早期に配備するための措置と言える。
スイスの重電大手ABB傘下のEV充電器メーカー、ABB Eモビリティー・ノースアメリカは、同社の充電器で現在設計・試験段階のNACSコネクターをオプション提供する予定だ。アサフ・ナグラー副社長(渉外担当)は「当社の充電器やユニットにNACSコネクターを組み込むことに対する関心は非常に高く、いつ使えるようになるのかという問い合わせが絶えない」と話している。
EV充電のハードウェアとソフトウェアを供給する仏電機大手シュナイダー・エレクトリックの米国部門でも、フォードとGMの発表以来、NACS採用への顧客の関心が急速に高まっている。
EV充電装置およびサービスのブリンク・チャージングは12日、テスラのコネクターを使用した新しい急速充電器を発売すると発表。チャージポイント・ホールディングスとトリチウムも同様の動きを見せ、EVゴーは自社の急速充電ネットワークにNACSコネクターを追加すると発表した。
■懸念は消えず
しかし、二つの規格の充電器がうまく相互利用できるのか、また規格が二つ市場に存在することで製造元や顧客のコストは上昇しないか…といった懸念は残っている。テスラのスーパーチャージャーはテスラ車と密接に統合され、支払いはユーザーのアカウントとつながっているため、テスラの携帯電話アプリケーションを通じて充電と支払いを円滑に行える。しかし、非テスラ車でテスラの急速充電器「スーパーチャージャー」を使う場合はそれほど単純ではない。
充電器メーカー、エクスチャージ北米部門のアーティッシュ・パテル氏は「どんな充電体験になるかよく見えてこない。フォード、GMなどの自動車メーカーはテスラ車にも円滑な統合体験を提供したいのか、それとも非テスラ車がより大きな充電網を利用できるようにあまり円滑でない統合に踏み出すのか」と疑問を投げかける。
スーパーチャージャーの開発に携わった元テスラ関係者は「NACSの充電器は短期的にはコストと複雑さを増すだろうが、車両数が多くユーザー体験が優れているため、政府は一つの規格(NACS)を支持する必要がある」と見ている。
一方、CCSを推進する業界団体チャーリン・ノースアメリカの代表で、EV充電部品業者アイオテッカ(IoTecha、ニュージャージー州)のCEOでもあるオレグ・ログビノフ氏は「CCSは10年以上にわたり複数のメーカーの装置で機能してきたため、支持する価値がある」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
2024年4月29日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
米商務省、TSMCのアリゾナ工場への投資を提案 〜 米中緊張悪化を背景にチップの国産化に重点
-
ディープフェイク、金融サービス業界をいよいよ標的に 〜 生成人工知能による音声模倣で詐欺急増は必至
-
2024年4月25日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
広告嫌いのテスラが一転、積極展開
-
ビットコイン半減は価格にいかに影響するのか 〜 最高値更新から乱高下、次の半減期が目前に
-
2024年4月22日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
ボルティモアの橋崩落、輸出・小売業者に影響
-
米国のMBA課程、人工知能分野の教育を積極化 〜 会社で求められる技能に学生側も関心を強める
-
2024年4月18日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
テスラ、急速充電網を開放~EV普及の節目となるか
-
2024年4月15日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
EV生産コスト、27年にはガソリン車より安く~ガートナーが予想
-
人間の労働力の方が人工知能より安価 〜 MITの研究、雇用機会の大部分は人工知能にまだ奪われないと結論
-
ドローン配送に現実味~運用範囲広がる