干ばつ対策として、無害の化学物質を雲に向けて噴射することで地上の降雨量を増やすクラウド・シーディング(cloud seeding=雲の種まき、人工降雨)技術への注目度が急激に高まっている。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、クラウド・シーディングは1950年代からさまざまなかたちで導入されてきた技術だが、最近になってふたたび脚光を浴びており、支持者らは「一定地域の雨量を15%増やせる」というデータを発表している。
人工的に降らせた雨は、農作物が乾期を乗り切るのを助け、農家や牧場主、農村部の住民に不可欠の地下帯水層に水を供給できる。米国西部やメキシコでは、極端な干ばつが頻発し、地球温暖化も進んでいる。そのため、太平洋やメキシコ湾の海水を淡水化して内陸に送る大がかりの技術よりも安い方法としてクラウド・シーディングの需要が高まっている。
現在、テキサスやユタ、コロラド、ネバダ、アイダホ、ニューメキシコ、カリフォルニアの各州で雨と雪の両方を降らせるクラウド・シーディング事業が進められている。そのほか、アリゾナでは新しく二つの事業が検討され、メキシコでも長引く干ばつに悩まされている5州で連邦政府当局がクラウド・シーディングを実施している。
クラウド・シーディングには上空と地上で行う二つの方法がある。多くの場合、氷のような結晶構造を持つヨウ化銀の粒子を使う。煙突のような装置で飛行機または山のふもとから化学物質を空中に散布したあと、気温が20°Fに達するとヨウ化銀のまわりの水蒸気が凍り始め、雨や雪として落下するのに十分な大きさになる。夏場には塩化カルシウムを含め、塩の結晶が水を引き寄せる性質を利用することもある。
コロラド州ロングモントでは、セント・ブレイン・レフトハンド水利地区の技術者らが「その技術と環境への影響を検討した結果、地域への水供給量を増やす安全で効果的な方法だと判断するにいたった。特に長期的な観点では何の問題もない」という調査結果を公表している。
一方で気象専門家たちのなかには、その有効性を疑う声や、ある地域に降るはずの雨を別の地域で降らせるだけではないかという指摘もある。懐疑派は、水の供給を維持するには地上での水保全がより確実な方法だとみている。
それでもクラウド・シーディングへの取り組みは勢いづいている。コロラドのセント・ブレイン水道局は2022年に、冬のクラウド・シーディングに4万ドルを投じ、州当局も請け負い業者らへの支払いに9万ドルを出した。
3月には、連邦内務省開拓局がコロラド川上流域の各州に対し、空中および地上でのクラウド・シーディングを実施するための240万ドルの助成金交付を発表している。ユタ州のクラウド・シーディング事業では1年で1200万ドルを確保しており、年間予算は80万ドルから580万ドルに増えている。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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