コーヴィッド19パンデミック効果の一つとして、ペットを飼う人口の急増が挙げられる。その結果、獣医の数が需要に追いつかないという現象につながっている。テッククランチ誌によると、ペット遠隔医療新興企業のエアベットは、競合他社と異なる取り組みによってその問題の解決をねらう。
▽ペットの医療費高騰という課題
有名な獣医であるジェフ・ワーバー博士を父に持つブランドン・ワーバーCEOは、エアベット(Airvet、ビヴァリー・ヒルズ拠点)を2018年に立ち上げ、ペットの飼い主と開業獣医をオンラインでつなぐことで、飼い主らがいつでもどこでも遠隔医療を受けられるようするプラットフォームを展開している。
「獣医不足によって、ペットの医療費が高騰し、医療措置を受けることも難しくなっている」「こんにち、多くの獣医が既存顧客の需要に対応するのに手いっぱいで、新規顧客をまったく受け入れていない状態だ」とワーバーCEOは指摘する。
「問題なのは、ほとんどの飼い主がすぐに獣医に行ける余裕がないことだ」「ペットの医療にはそれだけ大金がかかるのが実情だ」と同氏は話す。
▽2030年までに1万5000人の獣医が不足か
マース獣医報告(Mars Veterinary Health)によると、米国では今後10年間で4万1000人以上の獣医が増えなければ需要を満たせないが、同分野に進む人数が不十分であるため、2030年までに1万5000人の獣医が不足すると予想される。
また、米国のペット医療市場は2019年の1180億ドルから2030年には2770億ドルに成長すると見積もられる。
そのため、エアベットのような遠隔医療サービスは関心を集めており、その結果、ベンチャー・キャピタル投資業界も期待を寄せるようになった。エアベットは先日、シリーズBの資金調達で1820万ドルを集めた。同社は、2020年のシリーズAでは1400万ドルを調達した。
▽獣医やペット向け医療ソリューションの新興企業が増加
獣医の需給逼迫を受けて、近年にはデジテイル(Digitail)やミックスラブ(Mixlab)、ザ・ヴェッツ(The Vets)、ダッチ(Dutch)といった獣医支援ソリューションを提供する新興企業があいついで台頭しつつある。そのほか、マスコット・ヘルス(Mascotte Health)やメイヴン・ペット(Maven Pet)といった新興企業が最近、資金調達したばかりだ。
ただ、ファズィー(Fuzzy)のように、2016年の立ち上げ以来、総額8000万ドルを集めたにもかかわらず、2023年6月に廃業したところもある。
したがって、どのような製品をどのような事業モデルで展開するかによって明暗が分かれるのは、獣医不足といえどもほかの分野と同じだ。
▽ペットを飼う従業員向けの福利厚生という市場を開拓
獣医向けデジタル・ソリューションやペット向け遠隔医療プラットフォームは、一般的に消費者市場を標的とする。それに対してエアベットは、法人市場に照準する路線を打ち出す点で他社と大きく異なる。
エアベットのワーバー氏は、企業間取り引きを標的市場にすることに商機があると考えた、と話す。同社は、ペットを飼う従業員を多数抱える大企業らが福利厚生の一環として自社従業員らに獣医サービスを提供するという需要を掘り起こしている。同社の顧客には、アドビやセリダント、レックスフォード・インダストリアルが含まれる。
エアベットは、顧客数について明言を避けているが、2024年中に50社以上に増やせるという見通しを示した。
同社は、今回の調達資金を、顧客会社らとの協力関係の継続的拡大や製品開発、販売、販促の強化に投じる計画だ。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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