インターネットで商品を購入する際、注文はオンライン、受け取りは実店舗まで出向くという人が増え、eコマースと対面販売の境界線があいまいになっている。
■ラストマイルコスト削減
ウォールストリート・ジャーナルによると、小売業者は、利益率を下げかねないフルフィルメント(物流業務全般)費用を抑える目的もあって、ネット注文した商品を店で受け取れるサービスを提供している。倉庫と宅配業者をつなぐ複雑な物流作業に代わり、実店舗の従業員が注文品を棚から出して包装し、購入者の車まで運んだり、指定の受け取り区画に置いたりしている。
小売業者にとってこの動きは、実店舗を一種の仮想物流センターとして利用する試みの延長線上にあり、新型コロナウイルス禍を受けたオンライン購入の急増とそれが流通業務に及ぼす負担の増加から生まれた戦略だった。
シンクタンクのドイツ銀行リサーチ(DBR)によると、ネット通販ブランドの売り上げに占める宅配関連コストは10~15%だが、商品をトラックで店に届ければ2~3%になる。スポーツ用品販売ディックス・スポーティング・グッズのナブディープ・グプタ最高財務責任者(CFO)は「eコマースのラストワンマイル(最終物流拠点から購入者までの配達)は高くつく。注文品の大部分を店から発送するか店で購入者に渡す機能を持つことで、ラストマイルコストは2019年から現在までに大きく下がった」と話す。
消費者にとっては、宅配サービスや店舗で一から商品を探すよりも短時間で商品を入手でき、配送料の負担や店での衝動買いも避けられる。コンサルティング会社デロイトのマネジング・ディレクター、ロブ・ハロルド氏は「小売業者は、店舗という重要な資産をどう活用するかという視点で考え、消費者はいろいろな便利さの観点からこの方法が気に入っている」と分析している。
■コロナ禍後も需要は堅調
新型コロナが大流行した時期は、店舗に滞在する時間は短く、かついろんな商品を素早く購入する方法が求められたため、オンライン注文品の受け取り需要が急速に高まった。今ではネット購入のトレンドは薄れ、eコマースの成長も減速したが、消費者は店舗での商品受け取りを続けている。
オンライン調査グループのアドビ・アナリティクスによると、6月に店舗での商品受け渡しで完了した国内eコマースの販売構成比は、19年1月に比べて76%増加した。
小売大手ターゲットは23年2~4月期、即日引渡サービス売り上げが前年同期比5%以上伸び、店舗での商品受け取りは「一桁台後半」の伸びを記録した。
同業のウォルマートは、店舗渡しおよび配達事業が過去3年間は年40%の勢いで成長しており、22年は2億件以上の店舗渡し商品を扱った。
ネット通販最大手アマゾンも、店舗オーナーと契約する「アマゾン・トゥデイ」でこの事業に参入し、100都市で約1000店舗がこのオプションを利用している。アマゾンではSur La Table(スー・ラ・タブル)の台所用品を購入した人はその日に最寄りの店舗で商品を受け取ることができ、Sur La Tableは「店で客にブランドを体験してもらえる」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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