「ブラックマス」がEV業界の流行語に

電気自動車(EV)産業が世界的に拡大し、自動車メーカーや欧米諸国が中国を迂回するサプライチェーン(供給網)の構築を目指す中、電池のリサイクルに対する関心が高まっており、関連企業の業績報告では「ブラックマス(blackmass)」への言及が増えている。

■商品価値が上昇

オートモーティブ・ニュースによると、ブラックマスは直訳すれば「黒い塊」だが、業界では使用済みのEV用電池や電池工場から出るスクラップを再利用する際にできるリチウム、コバルト、ニッケルなどが混ざった中間生成物を指す。最近ではブラックマス自体が商品として価値が高まっており、英ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス、英ファストマーケッツ、米S&Pグローバルの市場調査大手3社は、2023年4月からブラックマスの定期的な価格査定を始めている。

自動車メーカーのブラックマスに対する関心は明らかに高まっている。BMW、フォード、メルセデス・ベンツなどはEV電池のリサイクル機会を探るための提携や合弁事業を発表。また資源大手グレンコアは5月、カナダのリサイクル企業ライサイクル(Li-Cycle)とイタリアでブラックマスを処理する計画を発表しており、化学大手BASFは24年からドイツでブラックマスを生産する予定だ。8月下旬には貿易会社マーキュリア・エナジー・トレーディングの関連会社も、ブラックマスの世界的販売を支援するため、米国のリサイクル業者との合弁事業に合意した。

ブラックマスは、電池を粉砕・破砕し、不要な元素を抽出した残りを精製して作られ、現在は電池の製造過程で発生する工場くずが原料の大半を占めている。S&Pグローバル・コモディティー・インサイツの推計では、20年代末までに重要金属の世界供給量に占める再生品の比率は、リチウムが15%、ニッケルは11%、コバルトは44%になると見られている。

■難しいLFPのリサイクル

一方で、克服すべき課題もある。例えば、発火の危険性が低くサイクル寿命が長く、コストも安いことで注目されるリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)は、リサイクルする上ではあまり魅力がない。ニッケルやコバルトを含まないLFPは市場価値が低いため、リサイクルもコストを低く抑える必要がある。

ファストマーケッツの最新データでは、ニッケル・コバルト・マンガン(三元系)リチウムイオン電池に含まれる金属の価値は電池1トン当たり平均約1万40ドルだが、LFPは3935ドルとはるかに低い。にもかかわらず、LFPはブラックマスに加工するコストがより高くなる上、技術的に難しい可能性もあり、リサイクル業者が利益を出せる余地が少ない。

また、欧州など一部の国では、ブラックマスが危険物として分類されているため、梱包、輸送、取引といった点で大きな懸念事項となっている。ファストマーケッツのジュリア・ハーティ氏は「欧州には電池を細断してブラックマスを作る工場がたくさんあるが、立ち往生している状態。これほど持続可能性に注目が集まっているのに、過度な官僚主義のせいで欧州ではリチウムイオン電池のリサイクルが難しくなっている」と指摘する。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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