米国は乗用車よりもはるかに大気汚染度が高い商用車の電動化を最優先すべきと主張する報告書を、物流ソフトウェア開発のアディオナ・テック(AdionaTech、本社オーストラリア)が発表した。
■ラストマイル配送電動化が急務
テスララティによると、ペプシコとKPMGが支援するアディオナの報告書「Connected Thinking」は、車の二酸化炭素(CO2)排出量を減らすためには、貨物配送の最終段階(ラストマイル)を受け持つ各種トラックをできるだけ早く電動化すべきで、2025年までには食料品、小包、家具などの都市部への配送はすべて電気自動車(EV)で行うべきだと結論づけている。
商用車は、乗用車よりも数は少ないがはるかに大きな汚染要因となっており、特に複数のトレイラーをつなげた大型コンビネーション・トラック(連結式トラック)は、台数は車全体の1%しかないものの、排ガス全体の18%を占める。
コンビネーション・トラックの平均燃料消費量は乗用車の約20倍で、わずか5台を水素燃料電池やリチウム電池などで走る環境に優しい代替エネルギー車に切り替えるだけで、100世帯がEVを購入した場合と同等の効果が得られるという。
平均的なトラックの年間走行距離は約2万2930マイルだが、運転台と荷台が一体式のトラックは1万2278マイルなのに対し、大型コンビネーション・トラックは5万9929マイルに上る。運輸省運輸統計局(BTS)のデータによると、年間の平均燃料消費量も、ホイールベースの短いライトデューティ車(LDV)は481ガロン、ホイールベースの長いLDVは640ガロン、タイヤが6本以上の単体トラックは1639ガロンだが、コンビネーション・トラックは9909ガロンと圧倒的に多い。
■最小限の努力で最大の効果を
アディオナ・テックのリチャード・サボアCEOは「米国は、道路沿いの大気の最大汚染源である大型貨物輸送車と配送車を積極的に脱炭素化する必要がある。米国の自動車産業は全ての車を電動化するために今行動する必要があり、そのためには論旨の通った思考と集団的行動が必要。3億台近い車両を一夜にして変革することは不可能なので、まずは最小限の努力で最大の違いを生むような決断をする必要がある」と述べた。
乗用車分野は、テスラに続いて複数の自動車メーカーが完全EVを作っているため電動車の導入が非常に早かったが、それだけに集中すべきではないとサボア氏は指摘する。「データをみれば、米国の最優先事項が消費者へのEV普及でないことは明らかで、車の排ガスを減らす最も効率的な方法は圧倒的にフリート(商用車群)の電動化だ。コンビネーション・トラック1台に電池を搭載すれば20世帯がEVを購入した計算になり、数百台のフリートを保有する企業も多い。最も多く、最も長い距離を走り、最も燃費の悪い車両の電動化を優先させなければならない」
フェデックス、アマゾン、ウォルマートなど複数の企業は、ラストマイル配送用の電動車の購入に取り組んでいる。ペプシコは22年、テスラ製セミトラックを購入して早々に電動化を始めた企業の一つだ。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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