環境規制当局や自動車メーカーによる電気自動車(EV)へのシフト推進の取り組みが、高金利によって阻まれている。
■計画を調整
ロイターによると、EVの販売は依然として力強く伸びており、コックス・オートモーティブのデータでは、米EV販売台数は2023年7~9月期に四半期で初めて30万台を突破したが、これまでEV分野に数十億ドルを投資してきた自動車メーカーなどが期待した水準には至らず、各社は高金利の継続を警戒して24年以降の計画を調整し始めている。
韓国の電池大手LGエナジー・ソリューションの李昌實(イ・チャンシル)最高財務責任者(CFO)は「世界経済が不透明なため、来年のEV需要は予想を下回る可能性がある」とみている。
ホンダとゼネラル・モーターズ(GM)は最近、50億ドルを投じて進めてきた低コストEVの共同開発計画を、発表からわずか1年で終了すると発表した。GMは「短期的なEVの取り組みは、特定の生産目標を達成するよりも需要を満たすことに集中する」と説明。メアリー・バーラCEOはアナリストらに対し「EVポートフォリオの収益性を強化し、目先の成長鈍化に対応するため、早急に対策を講じている」と述べた。
EV専業のテスラも、メキシコ工場の建設計画を延期した。イーロン・マスクCEOはその理由を説明する際に「高金利環境にあることを懸念している。車を買う人の大半にとっては月々の支払い額が重要な問題で、金利の高い状況が続いたりより高くなったりすれば、それだけ車の購入は難しくなる」と警鐘を鳴らした。
■原材料価格の下落で打撃
一方、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、7~9月期末に原材料のヘッジ取引がマイナスに働いたとして、23年通年の営業利益率見通しを下方修正した。原材料の一部はEV用電池に使われている。
他業界の多くの企業と同様、自動車メーカーも商品価格の変動に対して危険回避策を講じているが、EV需要の鈍化に伴い、電池向けも含めて原材料の価格が軟化している。ファストマーケッツによる炭酸リチウムのスポット価格評価を見ると、リチウム価格は23年初めからこれまでに67%も下落している。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)における金属コバルトの価格も、23年に入って20%下落し、22年5月からは半分以下に低下している。
またフォードは10月、電動ピックアップトラック「F150ライトニング」を生産するミシガンの工場で3シフトのうち1シフトを一時的に削減すると発表。7月には、EV事業の拡張を減速して商用車やハイブリッド車に投資をシフトしている。
中国のEV市場も厳しさを増しているため、日本電産はEV用モーター「イーアクスル」事業の通期損益がこれまでの黒字から150億円の赤字になると見ており、株価は過去15年で最大となる10%超の下落を記録した。
世界最大のEV用電池メーカーである中国のCATLも、需要の減速や競合激化を受けて、7~9月期の利益が10.7%増と22年1~3月期以来の低水準にとどまった。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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