北朝鮮の技術者らは、偽名やリンクトイン・プロファイルの偽装、偽造書類、模擬面接台本を駆使して、西側技術会社に遠隔労働就職するために巧妙なごまかしを展開し、国のために外貨を稼いでいる。ロイターによると、北朝鮮の偽装IT労働者と知らずに雇う会社らはそのため、北朝鮮の核ミサイル開発の資金を援助していることになる。
▽IT人材の国外派遣で核ミサイル開発費を稼ぐ
ロイターが精査した関連文書や、元北朝鮮IT職員およびサイバーセキュリティー研究者へのインタビューによると、国連から経済制裁を受け、西側諸国との商業取り引きを禁じられている北朝鮮にとって、北朝鮮国外で仕事を見つけて外貨を稼ぐには西側企業らの人材採用担当者たちをだますしかない。
米国と韓国、国連によると、北朝鮮は数千人のIT人材を国外に派遣しており、その活動はこの4年間で加速している。北朝鮮は、外貨を稼ぐことと核ミサイル開発の資金捻出のために農業や建設の人夫たちを中国やロシア、アフリカといった一部の地域に派遣してきた。そこにIT人材が加わった格好だ。
▽面接内容を想定した台本で西側の価値観を勉強
北朝鮮のソフトウェア開発者が使った面接台本には、「良い企業文化」を築くには何が必要だと思うかという質問に対して、「アイデアを自由に出し合うこと」という回答が書かれてある。
北朝鮮人は、自身の考えを自由に表現すると投獄される可能性があるため、そういった受け答えを想像できない。したがって、西側企業に就職するには、西側の価値観や考えを反映した回答を暗記する必要がある。
オンライン上に残っていたその台本のキャッシュ(cache)を発見したのは、シリコン・バレー拠点のサイバーセキュリティー大手パロ・アルト・ネットワークスだ。
その台本にはさまざまの文書が含まれており、北朝鮮労働者たちがソフトウェア開発の仕事に応募するために使った数十の偽の履歴書やオンライン・プロファイル、面接記録、偽造身分証明書が含まれている。
そのほか、米国の各州が発行する運転免許証やビザ、パスポート、各種の身分証明書を本物そっくりに偽造するデジタルひな型やそれらを販売する闇サイトも確認された。
▽遠隔でなければ働けない理由をこじつけ
ロイターが精査した指南書のなかには、応募した会社の物理的事務所では勤務できず、常勤の遠隔IT労働者として働く必要がある点を強調することが、その言い訳とともに明記されている。
「リチャード」と西洋名を名乗る北朝鮮人の組み込み型ソフトウェア上級開発者の場合、「私は数週間前にロサンゼルスからシンガポールに行った」「新型コロナウイルスに感染した両親を世話しながらしばらく一緒に暮らす必要がある」「落ち着いたらロサンゼルスに戻るつもりだ」「遠隔労働であればすぐに働ける」といった自己紹介文が台本に書かれてある。
▽手元に残るのは10~30%、大半は国に吸い上げられる
米司法省は2022年に、北朝鮮の労働者たちが国外の建設業やそのほかの肉体労働で得る外貨の10倍以上をIT労働者らが稼いでいると報告した。司法省はさらに、北朝鮮のIT労働者たちが偽の電子メール住所やソーシャル・メディア・アカウントで身分を偽装して米企業に遠隔就職し、北朝鮮の国家に代わって大金を稼いでいる、と警鐘を鳴らす。
米政府の発表によると、北朝鮮のIT労働力はおもに中国とロシアにおり、一部はアフリカや東南アジアで働き、一人あたり年間最大30万ドルを稼ぐ。北朝鮮の元IT労働者によると、外国企業に就職したIT人材は、少なくとも年間10万ドルを稼ぎ、そのうち30~40%が平壌に送金され、30~60%が諸経費に費やされる。労働者の手元に残るのは10~30%だ。
その人物によると、国策として外国に行って働くIT労働者は約3000人おり、北朝鮮内で西側企業に遠隔就職するIT人材は約1000人いると見積もられる。「最短で半年、長ければ3~4年ほど働ける」とその人物は取材に話した。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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