一般的な磁気部品を製造する中国企業が米国の輸入禁止企業に指定されていたことで、数千台に上る米国向け高級車の輸出が滞っている。
◇可視化は難しい
ウォールストリート・ジャーナルによると、問題になっているのは、自動車やコンピューターをネットワークに接続するために使われるLANトランス(信号変換器)という部品。独フォルクスワーゲン(VW)が欧州とメキシコから米国に輸出した車の制御システムに搭載されていた。この小さな部品を製造したのは中国のJWDテクノロジー(四川経緯達科技集団)という会社で、米国土安全保障省は2023年12月、中国で強制労働を行った疑いでウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づく輸入禁止対象の事業者一覧「UFLPAエンティティー・リスト」に同社を加えていた。
JWDはLANトランスを別の自動車部品会社に供給しており、VWに直接供給していた訳ではなかったが、部品会社から「リスト入り企業だった」との連絡を受けたVWは米当局に通告。VWは傘下の高級車ブランド、ポルシェ、アウディ、ベントレーの米輸出を保留している。部品を交換する間、遅れは3月いっぱい続く見込みとなっている。
米国は中国が新疆ウイグル自治区で大量虐殺や強制労働を行なったと主張しており、22年6月にはウイグル自治区からの物品輸入を原則禁止する法律のUFLPAを施行した。今回の一件で、米国の貿易政策が国際サプライチェーン(供給網)にいかに大きな影響を与えているかが浮き彫りになった。
アパレルメーカーやソーラーパネルメーカーはすでに、米国向けの輸出品を差し止められたり送り返されたりしており、この法律は自動車業界をも直撃している。強制労働との関連を疑われやすい自動車部品には、電子機器、アルミニウム、タイヤ、鉄鋼、電池などがあり、コンサルティング会社ユーラシア・グループのオリバー・モンティーク氏は「自動車メーカーが(業界の)サプライチェーンの可視性を高めようとしても長い時間がかかり、同様の問題はまた起きる可能性がある」と見ている。
◇テスラなども取引先に
JWDテクノロジーは、日付の入っていない会社紹介ビデオと、中国のソーシャルメディアへの21年の投稿で、テスラ、BMW、HP、シスコ、グーグル、アマゾンなどを取引先と記載していた。
BMWによると、同社はJWDテクノロジーを取引先に含めておらず、米国の税関当局も強制労働行為を理由に同社製品の輸入に異議を唱えてはいないという。HPは、JWDテクノロジーとの直接的な関係を示す証拠は見つかっていないと話した。シスコは、関連する国連の原則に沿ったデュー・ディリジェンス(相手企業の調査)を実施していると述べている。
UFLPAエンティティー・リストはこれまでに4回更新され、現在は30社以上が掲載されている。02年設立のJWDテクノロジーは、新疆ウイグル自治区の州都ウルムチから1500マイル以上離れた四川省の綿陽を拠点に、ネットワーク通信、家電、自動車通信に使用されるネットワークおよび電源トランス、RF無線周波数フィルターなどを生産している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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