米国では、高金利、操業コストの上昇、ドル高、商品価格の下落などで製造業の勢いが失速しており、需要低迷の長期化に備えて計画を見直すメーカーが増えている。
◇予想以上の低迷
ウォールストリート・ジャーナルによると、自動車、農機、洗たく機といった耐久消費財のメーカーは2024年内いっぱい厳しい状況が続くと予測しており、農機具最大手のディアは11月から時間給従業員の15%に当たる約2100人の工場労働者を解雇する。同業のアグコも6月、年内に全世界の給与労働者の6%に相当する約800人を削減すると発表した。
キャンピングカー、オフロード車製造のポラリスは、消費者が裁量支出を減らしたため、オートバイ、ボート、オフロード車の販売が減少し24年4~6月期の利益が前年同期から49%減少しており、ディーラーへの出荷を減らすため生産調整を行う予定だ。マイケル・スピッツェンCEOは「小売りは予想以上に低迷している」と話した。
家電大手ワールプールは、住宅市場の軟調で冷蔵庫や食洗機といった家電製品の需要が抑制されているとみており、製造業者向けに工具や工業用品を販売しているMSCインダストリアル・ダイレクトは、最新四半期の1日平均売り上げが前年同期比で7%減少した。
◇数年間のブームの後で
この減速は、新型コロナウイルスの世界的大流行の中で始まった数年にわたる好調な増収増益の後に起きている。最初はレストラン、コンサート、休暇旅行などにお金を使えない在宅消費者が、食洗機の買い替え、ピックアップトラック購入、住宅リフォームなどに散財した。しかし、サプライチェーン(供給網)の混乱で製造品の入手が難しくなり、企業は商品や材料をどうにかして入手しようと注文を増やした。結果的にそれがインフレをあおり、消費者の購買意欲を減退させることになった。
製造業界の低迷の一部は、半導体や電気自動車(EV)用電池の大型工場および発電インフラなどを支援する政府のプログラムで相殺されつつあり、一部の防衛関連企業はウクライナやガザの紛争継続で堅調を維持している。経済指標もまちまちで、4~6月期は耐久財への支出増で経済は予想以上のペースで成長。6月の鉱工業生産指数は上昇したものの、そのペースは前月より減速した。
◇中国の不振やドル高も影響
需要の減速で鉄鋼のスポット価格は年初から40%も低下している。鉄鋼・アルミの物流管理業者フラック・グローバル・メタルズ(アリゾナ州)によると、買い手は下落が続くと見て購入量を抑えており「この3年間、当社ではさまざまな過去最高があったが、また元の状態に戻りつつある」という。
自動車メーカーの多くは、EV生産を減速している。新規投資の縮小や、内燃エンジン車(ICE)の生産を増やすため工場を再編するところもあり、こうした変化はサプライチェーンにも波及している。
中国など世界各地の景気低迷も米企業に影響を与えており、エレベーター/エスカレーター大手オーチスは最近、24年の利益見通しをわずかに上方修正したが、中国での需要減退を理由に売り上げ見通しを下方修正した。またドル高によって他国の製品の方が安くなっていることも、米企業に不利に働いている。
ただ、7月30~31日に日米で金融政策を決める会合が開かれ、日銀は利上げを決定した一方、連邦準備制度理事会(FRB)は9月にも利下げするとの観測が高まり、ここ数日は円高ドル安の動きが加速している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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