電動化に取り組む西海岸の重要港湾、ロサンゼルス港では、停電によるクレーンなど荷役機械の停止が多発しており、ターミナル事業者の不満や懸念が高まっている。
◇今年に入って9回
ウォールストリート・ジャーナルによると、同港は2030年までにディーゼルエンジン駆動機械の段階的廃止を義務付けているが、現在の電力供給があまりに不安定なため、その実現が疑問視されている。企業はゼロエミッションへの移行にそれぞれ多額の資金を投じているにもかかわらず、基盤設備の問題が状況を複雑にしている。
ターミナル・オペレーターを代表する太平洋商船協会(PMSA)のトーマス・ジェレニッチ副会長によると、2024年に入って少なくとも9回の停電があり、複数のターミナルが影響を受けた。電圧のディップやサージ(急激な低下および上昇)は短時間で終わっても、それらが起きると船舶・港湾間のコンテナ積み下ろしを行うシップツーショア(STS)クレーンのシステムがリセットされる可能性があるため「貨物の流れが止まってしまい、大きな問題だ」という。
電力問題はクレーンだけでなく、ボックスの受け入れやトラックへの受け渡しを行う自動化ゲートや、コンテナの位置を管理するコンピューターシステムも停止させている。その場合、ターミナル運営会社は操業を再開する前に機械の再調整や、時には故障した回路カードの交換を強いられる。ターミナル運営会社は数十年前にSTSクレーンを電動化しており、現在は、コンテナを移動させたり積み重ねたりするヤードクレーンや巨大なフォークリフト、ドック間でコンテナを往復輸送するけん引トラック、これらの車両に電力を供給するための充電器など、電動車両や関連機器に数億ドルを投資している。
◇問題は配電に
ロサンゼルス港は、市が管理し、民間企業にターミナル区画をリースしており、電力はロサンゼルス水道電力局(LADWP)が供給している。同港のジーン・セロカ事務局長は、主な問題は電力の供給ではなく配電にあると話す。
LADWP関係者によると、今年の停電は、機器の故障、悪天候、鳥が電線にぶつかる、車が電柱にぶつかるなど、一連の異常な出来事によって引き起こされている。LA港の大きな弱点の一つは、風雨にさらされる架空送電線を使っていることで、LADWPは5億ドルを投じて地下送電線による追加電力供給プロジェクトに取り組んでいる。プロジェクトは29年までに完了する予定で、これによって信頼性が向上すると期待されている。
LA港および隣接するロングビーチ(LB)港は17年、排ガスの削減を進める州の取り組みの一つとして、ディーゼルエンジン駆動の荷役機械を段階的に廃止する方針を発表した。LB港では、サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)から電力供給を受けており、ターミナル各社によると問題は少ないという。ロングビーチ・コンテナ・ターミナルは、ほとんどの機械が電気で作動し、自動化もかなり進んでいる。短時間の停電は電池を使ったバックアップシステムで補うことができる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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