ベンチャービート誌によると、米国内の知識労働者たちは過去1年間に仕事量が31%増えたと答え、経営幹部らは、自分の部署の仕事量が46%増えたと回答したことが、ライクの調査で判明した。知識労働者らはそのため、生成人工知能の活用を積極化することで負担軽減に対処しようとしているが、課題もある。
▽解雇による引き継ぎで仕事が増加
特に技術業界や金融サービス業界では、解雇が相次ぎ、自分の役割りの重さに加え、退職した同僚から引き継いだ仕事と責任の重さに苦しんでいる、とライク(Wrike)は報告した。
また、それによると、米国内の知識労働者たちは、職場でむだになった時間を埋めあわせるために年平均40.8時間多く費やしている。別の報告によると、本来不要だった仕事に使われる時間が原因の追加コストは、従業員一人あたり年間1万5138.03ドルにも達する。
▽多くの職場で「BYOAI」が台頭
それらの諸問題の解決策の一つは人工知能ツール群の活用だ。多くの職場ではそのため、BYOAI(Bring Your Own AI to Work)が台頭している。その結果、ジェミナイ(Gemini)やクロード(Claude)、コーパイロット(Co-Pilot)、チャットGPT(ChatGPT)といった生成人工知能ツールを使って、調べものや作文、会議報告書の要約、電子メール内容の要約および返信内容の草稿を簡便化する人たちが増加中だ。
トムソン・ロイターの最新報告書「専門職の未来(Future of Professionals)」によると、平均的な知識労働者らは人工知能ツール群の利用によって週に4時間の作業時間を短縮できる。また、知識労働者らは、人工知能ツール群の利用によって、2020年代末までに週あたり12時間を節約できると予想される。
▽経営陣と従業員には「大きなへだたり」
ただ、従業員側と経営陣の期待の溝は広がっている。アーサナ(Asana)が発表した調査報告書「職場における人工知能の現状(State of AI at Work)」によると、正式な人工知能戦略を策定している会社の割り合いは31%に過ぎず、「人工知能導入に関する熱意や採用、利点の認識に関して、経営幹部らと個々の従業員または導入推進派のあいだには大きなへだたりがある」と明示された。
同調査では、社内横断的に共有する人工知能導入および活用指針を策定している会社の割り合いはわずか13%であることがわかった。人工知能ツール群を最大限に活用したい従業員側と、導入する部門や活用の深度に慎重な経営陣とのあいだに距離がまだあるため、熟考された活用指針を整備できない会社がほとんどだ。
▽ サムスンやベライゾン、シティグループ、ドイツ銀行では禁止
経営陣側の慎重姿勢を顕著に示すのがサムスンの事例だ。同社では、一部の従業員らがコーディングの際の問題解決や社内会議メモの要約に生成人工知能ツール群を使ったあとに、経営陣がその使用を禁止した。
そのほか、ベライゾンやシティグループ、ドイツ銀行はいずれも、個人データが共有されることへの懸念からチャットGPTの社内使用を禁止している。
さらに最近では、アイフォーンへのチャットGPT搭載をアップルが進めるなら、イーロン・マスク氏の会社(テスラやスペイスエックス、エックス、エックスAI)でアップル製端末の使用を禁止する、と同氏が公言した。チャットGPTのセキュリティー懸念がその理由だ。
▽セキュリティー・リスクの認識不足
デロイト(Deloitte)の調査でも、生成人工知能モデル群によって生成される内容の不正確さや偏向といったリスクを十分に認識していない利用者の多いことが明示された。それによると、25%の利用者は人工知能がつねに事実にもとづいていると考え、26%の利用者は、人工知能には偏向がないと考えていることがわかった、とデロイトは報告している。
その一方で、そういった問題を正しく認識し対処すれば、職場は人工知能ツール群の活用から恩恵を受けるのも事実だ、とアーサナは報告している。同社によると、調査対象会社の89%が人工知能ツール群の導入によって生産性が向上した、と報告している。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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