自動運転にライダーは必要か~業界内で意見分かれる

レーザー光を利用して人や障害物を検知し、距離を測定するライダーセンサーは、以前は自動車産業のハイテク化に不可欠な技術と考えられていたが、現在は先行きが不透明なオプション部品と見なされることが増えている。

◇競合センサーの台頭

オートモーティブ・ニュースによると、ライダーは初期の自動運転システムの実現に役立ち、自動車メーカーやハイテク企業は、ロボタクシー(自動運転タクシー)や高度な運転支援システムの構築計画にいち早くこのセンサーを組み込んだが、その後流れが変わった。

新興ライダー企業は、上場企業となって四半期ごとの煩わしさに直面し、製造上の複雑な問題、開発プログラムの遅延、他のセンサー技術の改善などもあって統合や閉鎖を含む業界再編が加速した。上場ライダー企業のほとんどは2024年に入って株価が急落し、大手ルミナー・テクノロジーズ(フロリダ州)は年初来75%、イノビズ(イスラエル)は68%それぞれ落ち込んでいる。

ライダーの価値を巡る業界の分断を示す動きとしては、インテル傘下モービルアイ(イスラエル)が9月、ライダーの自社開発を中止した。同社は周波数変調連続波(FMCW)方式と呼ばれるライダーの開発を目指したが、このタイプはドライバーが前方から目を離せる「アイズオフ」システムを実現する上でそれほど重要でないと判断されたからだという。ただし、構造が単純でコストも低いタイム・オブ・フライト(ToF)型ライダーは、特に外部業者の製品で予想以上のコスト削減が見られため、同社は今も自動運転システムの一部として導入に前向きだ。

一方で、カメラを使ったコンピュータービジョン・システムやイメージングレーダーの技術向上もモービルアイの決断の一因となっており、他のメーカーも競合するセンサー技術の進歩を認識している。

テスラなどの自動車メーカーは、完全自動運転システムに向けてカメラだけ、あるいはカメラ中心の手法に力を入れており、人工知能(AI)の進歩はカメラだけを使ったシステムの能力をさらに強化する可能性がある。

◇運転楽にする便利な機能?

ほとんどの専門家は、今もライダーは完全自動運転車にとって不可欠なセンサーであり続けると考えているが、運転支援システムにおけるライダーの役割はそれほど明確ではない。こうしたシステムは、運転する人間の補助を必要とすることが多く、ライダーのコスト(ボストンコンサルティンググループの概算では1個当たり約1000ドル)は、ハイテクパッケージの収益化を目指す自動車メーカーにとって受け入れ難くなる可能性がある。

そのため一部の自動車メーカーは、運転支援システムからライダーを省いている。議論の大きな部分を占めるのは、運転支援システムが事故を減らせるかという点で、米国道路安全保険協会(IIHS)が今年発表した調査報告書は、現状において部分的な自動運転は「長時間の運転を楽にするための便利な機能」であり「それが運転をより安全にするという証拠はない」と結論づけている。

ライダー推進派は、ライダーが普及すれば運転支援システムの安全上の利点や有効性が高まると見ており、ルミナーのオースティン・ラッセルCEOは「交通事故削減のカギを握る技術で、特に欧州連合(EU)の規制強化や、米国での歩行者検知に対応する規制案への対応で重要な技術になるだろう」と話している。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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