テンストーレント、ベゾス氏らから大型投資を獲得 〜 エヌビディアに対抗できる新勢力をねらう

著名な半導体工学者のジム・ケラー氏が率いるチップ新興企業テンストーレント(Tenstorrent、カリフォルニア州サンタ・クララ拠点)は、人工知能チップに次なる革新をもたらす可能性がある一社としてベンチャー・キャピタル業界から注目されている。

クランチベイス誌によると、2016年に設立された同社は12月2日、シリーズDの資金調達で6億9300万ドル以上を確保し、企業評価額が20億ドルに達したと発表した。同社の累計調達額はそれによって10億ドルを超えた。

同社には、グレイスカル(Grayskull)という主力の推論専用プロセッサーがある。グレイスカルは、搭載チップ群を通して効率的なデータ移動を可能にするよう設計されている。

今回のラウンドは、サムスン証券とAFWパートナースが主導し、ジェフ・ベゾス氏のベゾス・エクスペディションズやフィデリティー・マネジメント&リサーチ、LG電子、カナダ輸出開発省、オンタリオ・ヘルスケア年金、現代自動車らが投資に加わった。

半導体業界でもっとも高く評価される工学者の一人であるケラー氏は、社長兼最高技術責任者として2021年に同社に入社し、2023年初めにCEOに就任した。同氏はこれまで、インテルやテスラ、アップル、AMDに勤務した。

テンストーレントは、今回の調達資金を「オープン・ソース人工知能ソフトウェア・スタックの構築や開発者たちの増員、世界規模の開発&設計センターの拡大、人工知能開発者向けのシステムやクラウドの構築 」に投じる計画だ。同社はそれによって、人工知能チップ市場の圧倒的最大手であるエヌビディア(NVIDIA)に対抗する新勢力になることをねらっている。

近年における人工知能チップの需要増や価格高騰、調達困難を背景に、人工知能チップの設計や開発に取り組む新興企業らの動きが活発化している。そのおもの動きとしては下記が挙げられる。

*ライトマター(Lightmatter)は10月に、T・ロウ・プライスが主導したシリーズDで4億ドルを集め、評価額を44億ドルに拡大させた。ライトマターは、光を使ってチップ同士をつなぎ、人工知能に必要な深層学習演算処理を効率化する技術を開発した。
*ブラック・セミコンダクター(Black Semiconductor)は7月に、おもにドイツ政府から約2億7500万ドルを調達した。*セレスチャルAI(Celestial AI)は3月に、シリーズCの資金調達で1億7500万ドルを調達した。同社のフォトニック・ファブリック・プラットフォームは、電算とメモリーを分離し、広範での人工知能演算処理をより高速かつ高エネルギー効率にする。
*サンフランシスコ拠点のエッチト・ドット・エイアイ(Etched.ai)は6月に1億2000万ドルを調達した。
*イスラエルのヘイロー(Hailo)は、1億3600万ドルを集めた4月の資金調達を延長して1億2000万ドルを追加調達した。
*サンノゼ拠点のレコグナイ(Recogni)は最近、シリーズCで1億200万ドルを調達した。同社は、生成人工知能業界と自動車業界向けに推論チップを開発している。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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