KPMGの調査報告によると、2025年は半導体業界に明るい展望が見込まれる一方で、世界情勢と人材確保が懸念要因となる可能性がある。ベンチャービート誌によると、KPMGは最近、業界団体のグローバル・セミコンダクター・アライアンス(Global Semiconductor Alliance)と協力し、今回で20回目となる年次報告書「グローバル半導体業界の展望(Global Semiconductor Outlook)」を発行した。
▽業界幹部の92%が成長を予想
同報告書によると、聞き取り調査の対象となった半導体業界企業幹部らの約92%は、2025年に業界が全体として成長すると予想していた。人工知能やクラウド・サービス、無線通信、自動車技術に関連してデータ・センター需要が伸びているのを受けて、半導体業界にはかなりの楽観姿勢がみられる。
KPMGの「半導体業界信頼指数(Semiconductor Industry Confidence Index)」は2023年の54から2024年には59に上昇した。同指数は、50を超えれば展望が明るいことを意味する。信頼指数は、売上高成長や利益成長、人員増、研究&開発と先行投資のすべての分野でおしなべて自信が高まっていることを示した。
▽人工知能が売り上げ増を支える
KPMGの技術・メディア・通信業界担当責任者マーク・ギブソン氏は、半導体市場の成長見込みついて、「人工知能が短期的な成長と売上高の期待を支えている」と指摘する。「半導体業界の短期的な上向き基調は明らかだが、供給網を管理し人材を確保できる会社が人工知能ブームから持続的な恩恵を受けられるだろう」と同氏は付け加えた。
ただ、全体的な楽観ムードのなかにも、2025年には大きな課題も予想される。関税や貿易制限をはじめとする世界的な保護主義への流れや、半導体業界で続く人材不足が懸念材料だ。
同氏によると、供給網の中断に対して備え、柔軟性を持たせること、また人材開発と人材留保の努力を向上させることが、半導体業界の継続的成長にとって不可欠とみられる。
▽小規模企業の幹部らがもっとも楽観的
KPMGとGSAは今回の調査報告に際し、2024年第4四半期に世界各地の半導体会社らに調査を依頼し、156人の業界幹部に聞き取り調査を行った。調査に参加した会社らは、年間売上高10億ドル以上が58社、1億ドルから9億9999万ドルが54社、1億ドル未満が68社だった。
2025年の展望に関する幹部らの見通しは、全般的に明るかったが、興味深いことに、年間売上高が1億ドル未満と比較的小規模企業らの幹部たちがもっとも明るい展望を示した。
業界幹部らは自社と業界の両方の成長を非常に楽観視している。2025年での売上高成長を予想した回答者の割り合いは86%、10%以上の成長を予想した割り合い46%だった。92%は業界全体の成長を予想し、さらに、業界全体が10%以上成長すると予想した割り合いは36%だった。
▽ GPUとマイクロプロセッサーが特に好調の見込み
成長要因としては、過去20年の調査で初めて人工知能が最重要の要因として挙げられ、過去2年にわたって首位だった自動車を抜いた。結果として、人工知能の用途に使われるGPU(graphics processing unit)をはじめとするマイクロプロセッサーが最大の成長機会とみられ、メモリーや検知器、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を上回った。
向こう3年間にわたって半導体業界にもっとも大きな影響をおよぼす要因および業界は、広帯域メモリーをはじめとする人工知能関連の生産技術で、以下、クラウドおよびデータ・センター、無線通信、自動車と続いた。
▽保護貿易、人材、新たな競争、紛争、関税が懸念材料
一方、向こう3年間に半導体業界が直面する最大の課題としては、保護貿易と人材リスクが互角に挙げられた。年間売上高10億ドル以上のチップ大手らでは、保護貿易が明らかに最大の課題とみなされた。人材獲得競争を最大の懸念に挙げた割り合いは39%に達した。
向こう2年間に半導体業界全体に影響し得る地政学的な懸念としては、武力紛争と関税が指摘された。さらに、政府による助成や半導体技術の国有化も懸念の上位に挙げられた。そのほか、新たな競争の出現を挙げた割り合いも35%(前年の調査では19%)と高かった。
それらの課題への対応として、供給網を地理的に分散する努力や変化に応じて柔軟に対応できる体制整備が進められている。そういった取り組みの重要性は、2023年の調査では2位だったが、2024年の調査では最大の優先事項となった。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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