米国では、ガソリン安も手伝ってここしばらく大きな車の人気が高く、その間には販売が振るわない小型車やセダンモデルの販売を停止した自動車メーカーもあったが、最近は自動車価格の高騰や金利の上昇を受けて、より小さな車の購入を考える消費者が増えている。
◇大きさより価格優先
ウォールストリート・ジャーナルが伝えた調査会社モーター・インテリジェンスのデータによると、ホンダ「シビック」や日産「セントラ」など、小型でエントリーモデル車の販売は2024年は好調に推移し、1~11月は前年同期比で23%以上増加した。これは1桁台前半だった業界の成長率よりはるかに高い。
一方、米国の自動車メーカーにとって長らく収益性の高い市場の一つだった大型ピックアップトラックの販売は23年比で1.9%減少。一般的にファミリーカーとして好まれる中型SUVも2.3%落ち込んでいる。
小型車への関心が高まっているのは、車の所有コストがますます上昇しているためだ。JDパワーによると、新車の平均販売価格は依然として歴史的に高い水準にあり、11月には4万5000ドルを超えた。近年は保険料、ローン金利、修理費も上昇してさらに家計を圧迫している。出費がかさむにつれ、月々の支払額を抑えるために広さを犠牲にする消費者も増えている。
こうした傾向が続くかどうかは、今後数年間の金利と燃料価格次第となる可能性が高い。多くの自動車メーカーは人件費削減のためメキシコで低価格車を生産しているが、トランプ次期大統領はメキシコとカナダ製の製品に25%の輸入関税をかけると公約しているため、これによって値ごろ感がさらに損なわれる可能性がある。
◇日系ブランドに有利
大型車と小型車の価格差は大きい。市場調査のエドマンズによると、24年の小型SUVの平均価格は約2万9000ドルだったのに対し、中型と大型SUVはそれぞれ4万8000ドル、7万6000ドルだった。
この格差から最も恩恵を受けているのは、長年2万5000ドル以下のモデルもあるコンパクト・セダンおよびSUVの市場をけん引してきたトヨタ、ホンダなどの日系ブランドだ。その多くは他社が同カテゴリーから撤退する中、小型車の選択肢を提供し続けてきた。「Mazda3」やホンダ「HR-V」など、24年に二桁の販売増を記録した車種もある。
コンパクトカーのカテゴリーだけでも1~11月の販売台数は16%増で、近年低迷していたこの種のモデルの米市場シェアは回復している。また、コンパクトSUVやサブコンパクトSUVも同期は11.5%増と好調で、24年の全米販売構成比は約27%と、新型コロナウイルス流行前の22%から上昇した。
大型SUVの販売も伸び続けてはいるが、その主因はこうしたSUVを購入する傾向のある家族には余分なスペースや運搬能力が必要で、簡単に車を小型化できないためだといわれている。
低価格で燃費の良いコンパクトカーは、かつては若い層をブランドに引き込む手段であり、人生の早い段階で消費者を取り込み、彼らが年を取って消費力が増すにつれて同じブランドの高価モデルを売り込むという戦略だった。しかし、新車やトラックの購入を人生の後半まで待つ人が増え、ガソリン価格の低下もあって米国では大型SUVが優勢となった。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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