大型トラックメーカーやディーラーは、ゼロエミッションのトラックを巡る規制の変化や矛盾の渦に巻き込まれている。特にこれまで従来型燃料からの脱却で全米を主導してきたカリフォルニア州では、トラック電動化への道筋が不透明になっている。
◇インセンティブなしで販売継続
ウォールストリート・ジャーナルによると、カリフォルニアはさまざまな規制やインセンティブを利用して、2035年までに州内の港湾施設から、45年までにはその他のトラック運送事業からディーゼルエンジン大型トラックの大半を段階的に排除する計画を進めている。
しかし州大気資源局(CARB)は1月、トランプ新政権に配慮する形で、連邦環境保護局(EPA)に提出していたトラック事業者に無公害トラックの購入を義務付けるための認可要請を取り下げた。
電動トラックはディーゼル車に比べて航続距離が短い上、州内にはまだ充電インフラが不足している。このためトラック業界の関係者は州当局の動きを歓迎している。一方、加州にはまだメーカーに毎年無公害トラックの販売を義務づける規則が残っているため、トラックメーカーやディーラーは、新しい電動車両を購入しても規制上の優遇がほとんどない運送業者に対して無公害トラックを販売しなければならない状況が生まれており、各社の車両生産/販売計画を複雑にしている。
◇ディーゼルトラックが不足する?
国内最大手のダイムラー・トラック・ノースアメリカなどは、たとえトラックの需要が低調でも、法律を順守するためディーラーに一定数の電動車両の販売を要求している。複数のディーラーによると、もし要求通りの数のEVを販売しなければメーカーはディーゼルの新型トラックを店に送らないため、新しいディーゼルトラックの品不足につながる恐れがあるという。
フレズノを拠点に8店のディーラーを所有するカリフォルニア・トラック・センターズのダグ・ハワード社長によると、同社とダイムラー・トラックは、電動バスや環境対応エンジンを搭載した一部のディーゼルモデルなどの販売を通じて州規制当局に対するクレジットを積み上げてきたため、今のところ十分なディーゼルトラックを入手できるだろうが「規則が変わらない限りいつかディーゼルエンジンへのアクセスは途絶える」と見込まれる。
業界幹部らは、トランプ政権が現在および今後予定されている州や連邦の排ガス規制をさらに緩和して、ゼロエミッション化実現までの時間を引き延ばしくれるとの期待を高めている。輸送業者やトラックディーラーを代表するロビー団体クリーン・フレイト・コアリション(本部ワシントンDC)のエグゼクティブ・ディレクター、ジム・マレン氏は「(充電)インフラは整っておらず、積極的な整備計画も間に合いそうにない。だれも(トラック電動化)計画が達成可能だとは思っていないだろう」と話した。
カリフォルニアは、24年以降に販売するトラック の窒素酸化物(NOx)排出量削減も義務付けているが、基準値の達成に苦慮しているメーカーもあり、商業的な圧力はさらに強まっている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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